【特集2】早期復旧にグループ総力で対応 「千葉」の教訓生かし対策深化

2023年9月3日

【東京電力グループ】

「分社化したことで災害対策に不備が生じたり、災害時の復旧が遅れがちになってしまう事態には絶対にしてはいけないと考えている」。東京電力ホールディングス(HD)経営企画ユニット総務・法務室防災グループマネージャーの光田毅部長はこう話す。

大規模地震などの有事には東電グループである東京電力パワーグリッド、東京電力エナジーパートナー、東京電力リニューアブルパワーが、それぞれ災害の規模に応じて対応する体制を構築し復旧に当たる。また、発電事業を手掛けるJERAも連携に加わる。その中で東電HDはグループを束ねる形で、各社に対して応援要員の調整などを中心に支援する。

東電HDでは、災害のレベルに応じて三つに体制を区分している。台風によって広範囲にわたり停電が予想されるケースや地震や火山噴火などによる限定的な被害の場合は、総務・法務室長を本部長とする「第1非常体制」、台風で複数事業所の支援が必要となった場合や突発的な電気事故で広範囲な停電が発生した場合は防災担当役員を本部長とする「第2非常体制」。震度6弱以上の地震が発生した場合は社長を本部長とする「第3非常体制」―。

防災の三つの基本方針 被災状況を迅速に公開

では、東電グループの防災対策の基本方針はどういうものか。まず社員の人身安全の確保を最優先にして、電力供給を可能な限り継続することを前提に次の3点を実施する。

1点目は、首都直下地震を含む自然災害などに起因した電力設備の被災による広範囲で長時間にわたる停電を防ぐこと。2点目は内閣府中央防災会議などが公表している被害想定に基づき災害の規模を軽減するための対策を行い、早期に健全な状態に復旧すること。3点目が停電や設備被害の状況や情報を迅速に公開することだ。

この基本方針を基に、平時からの取り組みと被災時における取り組みを分けて整理している。

平時では耐震設計や補強、的確な保守・点検をすることで、設備を被災しにくくしている。また、設備構成の多重化やバックアップ機能を強化するなど被災時の影響を軽減する取り組みを進めている。

例えば変電設備では、高重心設備から低重心設備へ取り替えている。送電インフラ面では碍子(ガイシ)を、割れにくいFRP(繊維強化プラスティック)製へと切り替えている。鉄塔の脚間にはコンクリートで舗装し補強するなどしている。さらに電力系統網の複数ルートの構築や2回線整備といった取り組みも進めている。「こうした対策の一部は従来からも行ってきたが、中央防災会議などによる被害想定の見直しの度に被災想定エリアや対策を再確認し、設備更新のタイミングを見極めながら対策の中身を再構築している」(同)状況だ。

一方、実際に被災した場合では、「いかに早く被災地の状況を把握できるかが早期復旧のカギを握る」。光田部長は2019年9月に千葉県を襲い、多くの家屋が停電しながら復旧が遅れた台風15号の反省を口にする。

体制としては本社、総支社、支社の役割を明確に分ける。本社は全社的な対外対応方針を決定し、全体にまたがる優先復旧の判断を下す。総支社は都県域内の対外対応と復旧支援、支社では事業所内の設備復旧に当たる。

現地の被害状況を把握するために巡視要員を組成し、立ち入り可能な場所に対しては、過去の災害対応を踏まえ配電線事故回線数の2倍の巡視要員を確保。東電グループ全体で、最大1600班の巡視班を組成できるようしている。ちなみに19年の台風15号では約590班、同年の19号では約1000班であった。

また、立ち入りが困難なエリアに対してはドローンチームが対応する。発災後、48時間以内を目安として被害状況を確認し、停電時間が72時間を超えそうなケースでは、発電車を配置する。

大規模な復旧工事が必要となる際には、他電力からの応援部隊との連携も欠かせない。そのため「各電力共通の仮復旧」という考え方を取り入れた。「現場を完全に復旧させようとすると工事の工程数が増え、特殊な工具も必要になる。結果的に作業の効率が悪くなる」(同)。各電力会社間共通の工具を開発し、復旧工事を加速させるための工夫を施した。

応急復旧用特殊車両や電柱・柱上変圧器・電線といった復旧用資機材の配備も改善する。停電の長期化をあらかじめ想定し、ヘリコプターを活用した資機材の輸送なども想定するほか、東電グループ自身が他エリアへ応援することも視野に入れて分散配備をしている。

DXの技術を積極活用 情報をリアルにデータ化

情報共有を迅速化するためのDX化も、「千葉の反省」として進めている。現場の作業員が被災現場の状況をリアルタイムにデータ化し、本社側とで情報共有できる環境を整備した。例えば設備被害数を現場で登録し、発電車の配備状況や稼働状況を登録して、リアルタイムに集計する。さまざまな情報を一元的に見える化することで、復旧に向けた進捗の確認と、その見通しを判断しやすくする。

こうした対策には完成形がなく、東電HDによると今後は三つの観点が必要になるとしている。一つは連携先の強化・拡大だ。これまでも他者との連携を進めてきたが、従来以上に国、自治体、他電力、他業種、その他のインフラ企業との連携によるオールジャパン体制で対策を進めたいとしている。

二つ目が停電復旧の多様化だ。電力供給の〝担い手〟は、送配電インフラだけではない。発電車、電気自動車など、多様な分散型電源が考えられる。マイクログリッドのような仕組みも有効かもしれない。「いろいろな手段を検討していきたい」(同)

三つ目が、現在進行形として取り組んでいるデジタル活用のさらなる拡大だ。スマートメーターやドローンといった新しいアイテムも活用できるだろう。光田部長は「災害時にデジタルの力で被災状況の把握をより一層早めていきたい」と話している。

停電復旧では分散型電源を活用する(発電車)