ドイツの地熱発電・熱供給事業に参画 国内の地熱開発で知見を生かす

2023年9月8日

【中部電力】

中部電力は、カナダのスタートアップ企業「エバーテクノロジーズ(エバー社)」がドイツのバイエルン州で進めている、地熱発電・地域熱供給プロジェクト「ゲーレッツリート地熱事業」に参画している。エバー社の株主である中部電力は今回、プロジェクト事業会社に直接出資する。

エバー社は「クローズドループ」と呼ばれる、地下に張り巡らしたパイプに地上から水を流し込み、循環させて地下熱を回収する地熱利用技術の研究・開発に取り組んできた。地下の熱水や蒸気が十分でない地域でも効率的に熱を取り出せることが特徴だ。

カナダのアルバータ州で実証設備を運用しており、商用での建設は今回が初。独自技術を取り入れた「エバーループ」として設置する。

設備は、深さ5000mの位置まで垂直坑を2本と、そこから水平に約3000mの長さの水平坑24本を掘削し、ループを作る。地中部分にはシール材を混ぜた水を流し込み、表面を固めて水漏れを防ぐ。水がループを循環し、地下熱で湯を沸かす。いわば地球を湯沸かし器にする発想だ。

欧州の地下熱は150℃前後。地上に取り出した熱は、熱交換器を通して熱供給用導管とバイナリー発電設備に供給される。流し込んだ水は減量せず循環し続ける。現在1本目のループを掘削中で、24年10月に完成、運転を開始する予定だ。26年8月に全4本のループを完成させて、全面運転開始を目指している。

発電出力は、約8200kW(発電端)。ドイツのFIP(市場価格+変動プレミアムで一定価格にて買い取り)制度を活用して市場で販売する。熱供給は約6万4000kWを予定。約20万世帯分の供給量に相当し、近隣の二つの自治体と30年の売買契約を結んでいる。


EUイノベ基金獲得 国内の地熱拡大にも

プロジェクトの総事業費は数百億円に及ぶが、カーボンニュートラルへの移行を実現する革新的な技術であることが評価され、「EUイノベーション基金」から約140億円の補助が決まった。

「選出されたのは申請数の1割強。基金獲得は、EUから高い評価を得られている証しで、このことが第三者割当増資を引き受け、数十億円出資の決め手になった」と佐藤裕紀専務執行役員は、事業の将来性を確信している。

日本の地熱資源量は世界第3位で活用のポテンシャルは高い。エバーループは熱供給や発電を水の循環で制御できるため、低需要時には地下に蓄熱し、調整電源としての役割も担える。中部電力は、国内への展開も視野に入れる。

佐藤専務執行役員は「地熱の位置づけをドラスティックに変え得る技術だ」と大きな期待を寄せている。

ゲーレッツリート地熱事業完成予想図