【特集2】 東京都心部の熱供給を維持 直下型地震など災害に備える

2023年9月3日

日本経済の中心と言われる大手町・丸の内・有楽町地域へのエネルギー安定供給は欠かせない。同地域で地域冷暖房を担う丸の内熱供給はこの維持のためさまざまな施策を講じてきた。

【丸の内熱供給】

東京大手町・丸の内・有楽町は日本を代表する企業が本社拠点を構える日本経済の中枢とも言える地域だ。点在する巨大なビル群はエネルギー供給において万全な体制がとられている。同地域をはじめ内幸町や青山で熱供給事業を展開する丸の内熱供給は23のプラントを運営し、供給地域面積122・3ha、供給延床面積721㎡(2023年6月現在)に温熱や冷熱を供給する。

丸熱の本社機能が入る常盤橋タワー

七つのプラントを連携 さらなる強靭化を図る

この広大な面積に対し、安定的に熱エネルギーを供給するためには、レジリエンス対策を行うことが不可欠であり、丸熱ではさまざまな施策を行っている。その一つが、プラントの強靭化だ。大手町地域にある七つの冷水プラントを再開発に合わせて新設・連携することで、相互にバックアップできる体制を構築している。丸の内仲通りには、地下に洞道「SUPER TUBE」を新設。冷温熱配管や電力線を集約し、これまで分断していた地域間を蒸気連携でつなぐことで、供給における信頼性の向上、エネルギー効率化を図ると同時に、供給を継続しながら再開発を行うことを可能にした。

また、これまでビル内のプラントは地下に設けることが多かったが、2021年に竣工した常磐橋タワーサブプラントは、浸水対策として地上階プラントになっており、事業継続に寄与する仕組みになっている。今後、建設するビルも地上階にプラントを設けるビルが増えていくとのことだ。

安定供給において、設備のメンテナンスも重要だ。同社の設備にも40年を超えるものが出てきている。そうした設備は専門業者が診断し、老朽化している箇所があれば、その都度修繕している。中でも、「配管の管理には気を配っている。流す水質が重要で、高度な管理を行っている。鉄製の配管が錆びるなど影響が出るためだ。実際に建て替えになるビルの配管を切って調査した。配管の肉厚が薄くなるケースはほとんどない」。秋元正二郎開発技術部長はこう強調する。

近年では、冷熱供給先のビル側でもレジリエンス対策を実施している。ビルの自立分散性を高めるため、単独で発電機やコージェネを所有し運用できる仕組みを構築しているのだ。大丸有地域で停電が発生した場合、ビルの発電機から電気を丸熱のプラントに送電し、冷凍機やヒートポンプを稼働させ、冷水と温水を供給しビル側で空調に利用するといった非常時の連携スキームも想定している。

丸熱では防災訓練にも取り組む。年1回、首都直下型地震や河川氾濫などのシナリオに沿って、総合対策本部を立ち上げ、各エリアとの連絡や本社から救援派遣などの訓練を実施する。こうした訓練もコロナ禍が過ぎて、様変わりした。オフィスやエネルギーセンターに通勤する社員もいれば、テレワークを行う社員もいるなど、勤務が多様化している。これにより、連絡体制の徹底が従来にも増して重要となった。

「震度が社内基準を上回る地震が発生した場合は、緊急招集がかかる。モバイルの専用アプリで安否確認を行い、出社可能か回答することになっている。プラントは24時間365日稼働しているため、勤務体制の維持が必須となる。連絡に関する訓練は年数回実施している」(秋元部長)

同社は昨年9月、常盤橋タワーに本社機能を移した。同ビルには非常用電源が設置されており、非常時の総合対策本部を迅速に設けることが可能となった。また、新たな本社には各プラントを監視できるシステムを設置し、総合対策本部の機能の強化も同時に図った。

時代のニーズつかみ50年 都市部でも脱炭素化を目指す

丸熱は今年で50周年を迎える。設立当初の1970年代、地域熱供給は大気汚染の解決策として全国で導入が進んだ。オイルショック後は省エネの推進、90年代は地球温暖化問題が顕在化し環境負荷低減が課題となった。その後、ヒートアイランド問題など街づくりの在り方を問われた時代などを経てきた︒東日本大震災以降︑前述の防災対策で注目され、都市の強靭化に寄与している︒そして現代では、脱炭素化や省エネに資する仕組みとして評価されている。常に時代をキャッチアップして存在感を示してきた。

大手町センターのボイラー
大手町センターの冷凍機

その中で、丸熱では独自の脱炭素化への取り組みを展開する。21年11月には使用する都市ガスを全量カーボンニュートラルガスに切り替えた。年間消費量となる3400万㎥規模を切り替えることで、年間約9万7000tCO2排出量をオフセットした。これは国内最⼤規模だ。再生可能エネルギーを敷設するなどの取り組みが困難な都市部の脱炭素施策として好例だと言える。

設備運用では、AIを活用し省エネを図る。冷凍機をはじめとした設備が、現在の負荷に対してどのような運用状態なら、最も環境性能を発揮するか―。そうした課題解決を人手で計算しながら行うのは難しい。AIを使用すると、温度や湿度、需要などの過去データから瞬間的に算出し最適な運用が実現するという。現在、AIを活用するのは2カ所のプラントのみだが、4%程度の省エネ効果があった。「今年度中に3カ所増やして、さらに効率を上げていきたい」と秋元部長。

大丸有地域は28年オープン予定の常盤橋街区のトーチタワーをはじめ、今後も複数の再開発プロジェクトがある。こうしたビル建設においても、レジリエンス性、脱炭素化、省エネに向けて丸熱はまい進していく構えだ。