【電源開発 菅野社長】脱炭素と安定供給両立 より難しい局面こそ 果敢にチャレンジへ

2023年9月2日

GXで一層重要に 大間原子力への期待

志賀 5年ほど大間原子力発電所に赴任していたそうですね。

菅野 1994~99年までです。赴任当初はATR(新型転換炉)実証炉計画でしたが、1年後に原子力委員会決定でフルMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)のABWR(改良型沸騰水型軽水炉)計画に変わりました。

志賀 GX(グリーントランスフォーメーション)関連法が成立し、原子力、とりわけサイクル政策の一翼を担う大間の重要性はますます高まります。新規制基準適合性審査の進捗はどうでしょうか。

菅野 当社が原子力規制委員会に提出した審査資料において解析データに一部入力ミスがあり、原因分析などの対応に時間を要していましたが、既にその再発防止策を含む報告を規制委員会に申し上げており、なるべく早く審査が進むよう、引き続き最大限努力していきます。

 社長就任後、大間と近隣自治体を訪れました。首長や議員の方々にお会いし、中には私が大間赴任時に面識があった方々にも再会しました。改めて地元の運転開始への期待の大きさを感じ取りました。

 従前から掲げる目標通り工事を完遂し、早期の運転開始を実現できるよう取り組んでいきます。

志賀 そのほかのGX政策への期待については。

菅野 米国ではインフレ抑制法のインセンティブが威力を発揮し、グリーン投資がとても活発に行われています。翻って、日本の事業者がどの程度投資できるのかという点については、今後発行されるGX経済移行債を活用した支援、あるいは水素・アンモニアに対する化石燃料との値差補填などの具体論が見えてくると、事業者として判断できる状況になります。その後、求められるのはスピードアップだと考えています。

志賀 最後に改めて、自社の強みを生かし会社をどうけん引していくのか、意気込みをお願いします。

菅野 民営化して20年以上経ち、大きく変わった面はありますが、根本にあるのはやはり社会の基盤を支えるという気概です。また、われわれは地盤となる地域がなく、逆に言えば、日本中、世界中どこにでも出かけて行き仕事をする機動力はあると自負しています。この機動力を発揮して、時代のさまざまな要請、課題に応えていく所存です。

<対談を終えて>
社会の基盤を支える仕事を志しJパワーに入社。電力の安定供給とカーボンニュートラルの両立という難事業には気概を持って取り組もうと、社長就任に当たってグループ全社員に呼び掛けた。機関投資家などが企業の気候変動対応の実績を厳しく見る事態に至っても、チャレンジしがいがあると武闘派の性格に火が着いた。火力電源の最終ゴールはCO2フリー水素発電と定め戦略を練り、再エネについては自社の豊富な土木技術陣の人的資源で洋上風力に勝機を見る。

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