【東北電力 樋口社長】お客さまに「より、沿う」付加価値サービス提供で 自由化競争に打ち勝つ

2023年10月1日

他の大手電力会社や新電力との競争が来年度以降、さらに厳しさを増すと見る。地域に寄り添いながら、価格面のみならず、お客さまに「より、沿う」付加価値サービスを強みに、競争に打ち勝っていきたい考えだ。

【インタビュー:樋󠄀口 康二郎/東北電力社長】

志賀 6月に低圧規制料金の値上げに踏み切りました。

樋口 ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響などにより、さまざまな物価が上昇する中、当社は、これまでも徹底した経営効率化に努め、低圧規制料金の料金水準を維持するよう努めてきました。しかしながら、昨年6月には、燃料費の高騰に伴い燃料費調整単価が上限に到達し、その超過分を料金に転嫁できない、いわゆる「逆ザヤ」の状態が継続していました。 これを見直さない限り、当社の財務基盤はますます棄損し、設備投資ができないようなことになれば、安定供給に支障を来しかねないことから、「苦渋の決断」ではありましたが低圧規制料金の値上げを実施しました。

志賀 23年度通期では経常損益が前期の1992億円の赤字から2000億円の黒字に転換する見通しです。

樋口 21、22年度と2年連続で経常赤字に陥り有利子負債残高がおよそ1兆円増加し、自己資本比率が10・5%まで低下するなど、財務状況が急激に悪化したことから、電力の安定供給を果たすためにも今年度は何としても黒字を確保し、その上で早期かつ持続的に利益を積み上げていくことで財務基盤の回復と安定化を図っていく必要があります。第1四半期決算では、値上げ時期が当初の予定よりも2カ月遅れたことにより150億円程度の収支悪化影響があったものの、高圧以上のお客さまなどの電気料金の見直しに加えて、燃料価格の低下に伴う燃料費調整制度のタイムラグの影響が利益を大きく押し上げ、収支が大幅に改善しました。

 通期業績についても、電気料金全般の見直しによる収入増や、昨年12月に高効率の上越火力発電所1号が営業運転を開始したことによる燃料消費量などの抑制、燃料価格の動向の見極めによるタイミングを捉えた燃料調達の効率化などに加え、今後も燃料費調整制度のタイムラグ影響が利益を押し上げる見込みです。

       ひぐち・こうじろう 1981年東北大学工学部卒、東北電力入社。
       2018年取締役常務執行役員発電・販売カンパニー長代理、原子力本部副本部長、
       19年取締役副社長 副社長執行役員CSR担当などを経て20年4月から現職。

依然厳しい財務状況 早期の回復に努める

志賀 これを機に、財務基盤の強化が期待されます。

樋口 当社の6月末時点の自己資本比率は12・4%と東日本大震災直後と同程度です。今年度末の自己資本比率は13・0%程度へと若干改善する見込みですが、有利子負債残高は震災直後を上回る3兆3千億円を超える水準が依然として続くものと想定しています。

 過去の大規模災害レベルと同程度の自然災害リスクへの備えや収支変動への備えとしてはかなり脆弱であり、燃料価格や卸電力取引市場価格の急激な変動など、電気事業運営上のリスクの振れ幅がこれほどの状況になかった震災直後とは異なり、危機的な状況が継続しています。このため、電力需給の最適化を図りつつ、グループ全体で「サービス提案の強化」「原子力発電所の再稼働」「経営全般の徹底的な効率化」に取り組み、早期の財務基盤回復に努めます。

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