【中国電力 中川社長】信頼回復に努めるとともに市場リスクを低減・回避し経営体質の強化を図る
コンプライアンスの強化、収支・財務状況の改善など、大きな使命を背負い、6月に社長に就任した。
再エネ、原子力、火力を最適に組み合わせ、エネルギーの脱炭素化を図ると同時に、市場変動リスクに左右されにくい経営体質を目指す。
【インタビュー:中川 賢剛/中国電力社長】

志賀 前社長の退任を受けての就任となりました。課題山積ですが、まずは経営トップとしての抱負をお聞かせください。
中川 公正取引委員会からの排除措置命令などをはじめ、一連の不適切事案の発生について、お客さまや関係者の皆さまに多大なるご心配、ご迷惑をお掛けしたことについて深くお詫び申し上げます。その原因には、競争環境下で行う業務に対する意識改革ができていないことなど、長期的に取り組むべき課題がありますので、私が先頭に立って再発防止策にしっかりと取り組み、信頼回復に全力を挙げていきます。
もう一つ、取り組まなければならない重要課題が、財務体質の改善です。過去に例を見ない火力燃料の価格高騰により多額の燃料調整の期ずれ差損が生じたことで、2022年度には過去最大の最終赤字に陥りました。今期は収支が回復したように見えますが、前期とは逆に、燃料価格が低下したことにより、多額の期ずれ差益が生じることが主な要因です。
低圧の規制料金を含めた料金見直しにより、ようやく収支・財務状況の改善に向けたスタートラインに立つことができたとはいえ、島根原子力発電所2、3号機はいまだ稼働しておらず、燃料・電力市場価格の変動による収支悪化リスクを抱えている状況に変わりはありません。電源事業本部や需給・トレーディング部門での経験を生かしながら、原子力を含む自社電源の安定運転によるバランスの取れた電源構成を構築するとともに、市場リスク管理を徹底しつつ、デリバティブなどの金融手法を活用することで、市場の変動リスクに左右されにくい経営体質の強化に努め、安定的な収支・財務基盤の構築を目指します。
内部統制強化委設置 信頼の維持を目指す
志賀 9月28日には、公取委に対し処分の取り消しを求めて東京地裁に提訴しました。
中川 事実認定と法解釈において、当社と公取委との間で一部に見解の相違があることから、公取委が独占禁止法違反であると認定した各命令の全部の取り消しを求める訴訟を提起したものです。当社としては、独禁法への抵触を疑われてもやむを得ない事案を起こしたことへの深い反省のもと、再発防止策を着実に実施しつつ、公正な判断を求めていきます。
志賀 内部統制強化委員会を立ち上げた狙いは。
中川 これまでも再発防止に取り組んでいましたが、経済産業大臣からの業務改善命令を受け、外部のアドバイスをいただきながら客観性の高い取り組みにつなげていくために設置しました。信頼回復を果たし、それを維持・継続することはもちろんのこと、電力システム改革の変遷に合わせて内部統制の在り方も変わっていきますので、その変化に合わせ改革し続けます。