【特集2】世界最大級のメタン製造 国産と人工の二大生産へ
【INPEX】
国内に天然ガス田が点在する中、新潟県長岡市周辺のガス田は埋蔵量、生産量とも国内最大規模である。資源開発大手のINPEXは、ここでガスを採掘し都市ガス事業として生産・供給する。現在、同社が主体となり、同市の生産拠点の一つ、越路原プラント(日量420万?)の近隣で、世界最大級のe―メタン製造に向けた実証プラントの建設が進む。
「高圧ガス保安法に則って、実証エリアの造成を進め、1ha程の敷地に原料供給、ユーティリティ、メタネーションの三つのエリアを整備する。2025年度から実証し、1時間当たり400?のe―メタンを生産する予定だ」。水素・CCUS事業開発本部の若山樹プロジェクトジェネラルマネージャーはこう話す。
同社がこの地でe―メタン製造の準備を進めるのは、メタネーション反応に必要なCO2を大量調達できるからだ。天然ガスを産出する際に出る随伴のCO2をそのまま利用できるのである。1時間当たり400?のe―メタンを製造するには、同量のCO2が必要となるが、同サイトからはそれ以上のCO2が随伴で排出される。
まだ実証が始まっていない現在は、隣接する産業ガスメーカー向けに、液化炭酸・ドライアイス販売用の原料としてCO2を供給している。それ以上は、大気中に放散している状況だ。「実証が始まったとしても、CO2の供給余力は存分にある」(若山氏)。供給インフラは、越路原プラントから実証プラントまで、CO2パイプラインを地下に敷設して整備する。
e―メタン製造に必要なもう一つの重要な原料の水素は、液体水素タンク(78?)を新設し、岩谷産業から調達する。岩谷の液水製造拠点となる千葉・市原、大阪・堺、山口・周南の3拠点から、タンクローリー輸送によってデイリーで運んでくる計画だ。
発熱反応への対応 総合効率を向上させる工夫
実証はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの助成を受けたもので、大阪ガス、名古屋大学とのコンソーシアムで行う。INPEXが商用スケールの適正化を検討し、大阪ガスが反応プロセスの技術開発、名古屋大学がシミュレーションの技術開発を担う。INPEXはこれまでも、1時間当たり8?程度の小規模実証を行っており、その知見を生かして今回の実証にトライする。
具体的な実証項目は次の三つだ。1点目は触媒技術に関わるもので、触媒を使ったメタネーション反応の挙動を把握すること(反応シミュレーション)。2点目がプロセスに関するもので、設備の基本性能や触媒の耐久性評価。3点目が商用スケールに向けた検討だ。
期待が高まるe―メタンだが、実用化にはハードルがある。
「特に課題となるのが、メタネーション特有の発熱反応への対応だ。発生する熱を再利用しメタネーション反応の総合効率を向上させるようなエンジニアリング上の工夫を施して対応していく。過去の小規模プラントからスケールアップすればよいと思われがちだが、そんなに単純な仕組みではない。しっかりとシミュレーションして、大型化に対応したい」(若山氏)とし、30年ごろを目途に1万?を目指す。
