【特集2】CO2を有効利用するバイオ系技術 遠心分離技術活用のSAF燃料製造

2023年11月3日

【三菱化工機】

三菱化工機のカーボンニュートラル技術は水素製造だけにとどまらない。同社独自の技術を用いて、バイオ系や航空燃料向けのCN化を支える。

都市ガス業界と共に、水蒸気改質の技術を用いた、水素製造の技術を培ってきた三菱化工機。同社は、こうした技術を基にしてカーボンニュートラル(CN)の実現に向けて開発した、「HyGeia(ハイジェイア)」シリーズなどを工場向けに納入しているほか、水素ステーションなどの整備に力を注いできた。

そんな同社には水素製造の技術以外に、二つの特徴的なCN技術がある。一つはバイオ系向けにCO2を有効利用する設備である。

三菱化工機アドバンスの増田吉兼プラント環境営業部主事は、こう話す。「工場から排出されるCO2を回収してコストを掛けずに有効活用したいというニーズが年々増えている。化学プラントや培養プラント、排水処理プラントの設計から施工まで手掛けている当社の強みを生かして、CO2を植物の光合成を促進するために活用する可搬式の微細藻類培養装置『Algacube(アルガキューブ)』を開発した」

製品の仕組みはいたってシンプルだ。長さ3m×高さ2m×幅1.1mのユニットで、細長いガラス管の中に培養液を循環させ、太陽光やLEDといった光源を照射する。回収したCO2を加えて光合成を促す。

可搬式のため屋内外を問わず導入できる。培養した藻類は燃料であったり、健康食品向けの油脂を抽出することが考えられる。実際に「CO2を有効活用したいという大手製造業工場向けに導入したケースもある」(増田氏)という。

また三菱化工機の本社工場内(川崎市)に設置している水素ステーションと微細藻類培養装置を接続する実証を行っている。都市ガス改質由来の水素製造の宿命として、どうしてもCO2が発生する。このCO2を藻類の培養へ有効活用するユニークな実証である。

船舶燃料用の遠心分離技術 SAF燃料で空のCN支える

もう一つの技術が連続遠心分離機「ディスクセパレータ」だ。こちらは、CN燃料であるSAF(持続可能な航空燃料)の製造を支える設備である。

三菱化工機の中川将英舶用機械営業部次長は次のように話す。「もともと当社には舶用燃料をきれいにする遠心分離技術を保有していて、船舶向けに80年近くの販売実績を持っている。国内で舶用向けに遠心分離機を手掛ける企業は当社のみで、世界シェアでは1位の実績」。三菱化工機では、この技術をSAF向けに活用していく。

各地から集められた多様な廃食油を、遠心分離によって夾雑物を分離し、SAFを製造しやすい形に仕立てていく。実際に、石油元売りのコスモ石油が国内で建設するSAF製造工場へ納入することが決まっている。

「海」から始まった技術を「空」へと転用し、空・海で使われる乗り物燃料のCN化を支えていく。

アルガキューブ(左)と遠心分離設備がCNを支える