【特集2】岐路に立つ都市ガス産業 CN実現への転換期に挑む
2050年のカーボンニュートラル(CN)達成に向け、都市ガス産業は変革を求められている。地域に根差した低炭素化の取り組みや、各社の脱炭素戦略について総力取材を行った。
都市ガス業界は、2050年の脱炭素社会実現に向けた転換期にある。まずは30年のNDC(国別目標)の達成が求められている。そのために有効とされるのは、ほかの化石燃料から天然ガスへの移行、分散型コージェネや燃料電池の普及によるガスの高度利用、クレジットでカーボンオフセットしたカーボンニュートラル(CN)LNGの導入などだ。
地域に密着した脱炭素化 自治体と連携協定を締結
地方の都市ガス事業者は、地域に密着した脱炭素化の取り組みを進めている。その一つに、連携協定の締結によるCN都市ガスの供給がある。西部ガス長崎は長崎市と協定を締結。そのきっかけは、同市新庁舎へのCN都市ガス導入の提案だったという。自治体にCN都市ガスを供給するのは、西部ガスグループ初の取り組みとなる。また、秦野ガスは秦野市、東京ガスと協定を結び、東京ガスから卸供給を受け、本社事務所での自家消費に加え、秦野市役所へ供給を行っている。
佐賀ガスは、都市ガスをCN化するJクレジットにもこだわりを見せる。県有林由来のクレジットの使用や、2024年のクレジット化を目指し市有林でのモニタリングなどを進めている。
CN都市ガスとは別の手法でCO2削減に取り組むのは、広島ガスだ。同社は森林保全活動を通じて、地域活性化に貢献する。森林にはCO2吸収のほか、生物多様性の保全や土壌に水を貯えることによる防災といった多くの利点がある。顧客を招いたイベントの実施や森林組合との連携などにより、地域活性化にもつながっている。

また、北海道ガスはガスエンジン12基を有する「北ガス石狩発電所」を活用し、再生可能エネルギーの需給調整に挑戦する。市場連動価格買い取り(FIP)制度を利用し、町営の風力発電所を持つ苫前町の電力を購入。同町の公共施設や事業者に供給することで、地域の脱炭素化を促進する。
地域に根差した取り組みが進む一方、メタネーションやCCS(CO2回収・貯留)・CCUS(CO2回収・利用・貯留)といった技術開発も加速中だ。国内資源開発大手のINPEXは、新潟県長岡市でe-メタン製造に向けた実証プラントの建設を進めている。長岡市周辺のガス田は埋蔵量、生産量とも国内最大規模だ。天然ガスを産出する際、e-メタン製造に必要なCO2が大量に調達可能。実証プラントができあがれば、世界最大級となる。
低炭素化による地方創生と脱炭素化を目指す技術開発の両輪で走る、都市ガス業界の取り組みに注目したい。