【特集2】町営風力をFIPへ切り替え 非化石価値を地元に還元

2023年11月3日

【北海道ガス】

北海道北部の日本海沿岸に位置する小さな町――苫前町は豊かな資源に恵まれている。タコやエビ、ホタテなどの海産物、大きく甘い「とままえメロン」などの農産物、そして強く吹きすさぶ「風」だ。

風車の建設には、年平均風速が6m以上でないと事業性がないと言われているため、山の上などに建てるケースが多い。ところが、苫前町は街中でも平均風速7m弱を観測する「風のまち」だ。

同町は町営の風力発電所「苫前夕陽ヶ丘風力発電所」を有し、20年以上前から再生可能エネルギーの活用に取り組んできた。昨年1月にはゼロカーボンシティ宣言を表明。第一歩として、今年6月に北海道ガスと連携協定を結び、市場連動価格買い取り(FIP)制度を利用した環境価値の地域内活用モデルの構築を目指す。

豊かな緑に囲まれた風車の年間総発電量は約600万kW時だ

知見を生かしたスキーム 今後は他地域への展開も

苫前町では、現行の固定価格買い取り(FIT)制度で再エネ由来電力を販売すると、非化石価値の活用が容易でないという課題を抱えていた。そこで、北海道ガスが提案したのはFITからFIPへの切り替えだ。北海道ガスが苫前町の電力を調達し、非化石価値を持つ電力として同町内の公共施設や事業者などに供給。地域の脱炭素化に貢献する。

このスキームでは、同社が発電計画・予測やバランシングの管理を行うため、町側にはインバランスなどのリスクはない。電力の売り先についても、北海道ガスが買うことで町側の不安を解消した。現在は切り替え手続きの申請中で、実際の電力供給は来年度以降を予定している。

こうした地域の電力を買い地域に供給する取り組みに、過去の知見が役立ったと話すのは、経営企画部経営企画グループの宮澤智裕氏だ。17年に連携協定を結んだ上士幌町では、地域電力会社を設立しエネルギーの地産地消を促進。今回は電力会社を地域につくるのではなく、その役割を北海道ガスが担うという新たなパターンとなった。「地域電力を立ち上げるのは簡単ではないが、苫前町のスキームなら地域に十分なエネルギーがあれば横展開が可能」と展望を語る。

宮澤氏は、「FIPへの切り替えはチャレンジングな試みとなる。インバランスが発生しないよう、当社が保有する12基のガスエンジンで構成される『北ガス石狩発電所』を活用して需給調整を行う。再エネが普及する中で、ガスエンジンの価値を高める取り組みの一つにしていきたい」と意気込みを見せた。

協定を締結し脱炭素化を促進