【特集2】森林由来のJ―クレジットを活用 地域内経済循環を生み出す

2023年11月3日

【佐賀ガス】

佐賀ガスは昨年10月、森林由来のJ―クレジット100t分を購入し、CN(カーボンニュートラル)都市ガスの販売を開始した。佐賀県が県有林で計画的に間伐を実施し、J―VER(J―クレジットの前身)の認証を得て2012年から販売していたものだ。J―クレジットを利用したCN都市ガスの販売は九州初。森林由来のJ―クレジットを使うのは全国初となる。

同社は02年に民営化された。供給範囲は市町村合併前の旧佐賀市エリアで、約6万7000世帯のうち30%強に都市ガスを供給している。自社の発展には、佐賀市の活性化が不可欠とし、「脱炭素化×地域活性化」をキーワードにアクションプランを作成。都市ガス事業以外でも空き家見守りサービスなどに取り組んできた。

佐賀市は05年の市町村合併後、10年に「環境都市宣言」をし、14年には「バイオマス産業都市」に認定されるなど、高い環境意識を持つ。20年には「ゼロカーボンシティさがし」を表明し、50年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げた。

同社はこの宣言を実現するため、「地域内経済循環」「地産地消」「地域活性化」といった、同市が目指す姿を踏まえ、都市ガスで貢献できることを検討。森林由来のJ―クレジットによるCN都市ガスの利用に着目した。

地産地消を実現するため、佐賀市もまた、1800haの市有林のうち30 haでJ―クレジット創出のためのモニタリングを始めた。早ければ来年には国の認定を受け、クレジット化できる予定だ。

佐賀市はクレジットの売上げを森林の管理や整備の財源に充てる。同社が購入し、CN都市ガスを市内に供給できれば、採用する企業は事業活動で発生するCO2を削減できる。脱炭素への取り組みが地域内経済循環を生み出していく。

市有林で創出されたクレジットによる脱炭素化のイメージ

佐賀市と連携協定を締結 ガスができる脱炭素をPR

同社と佐賀市は、双方の資源を有効活用することで、市民の地球温暖化防止への意識向上を図り、ゼロカーボンシティさがしの実現に寄与できることから、今年7月、脱炭素化に向けた連携協定を結んだ。連携項目は、①環境に関する貢献活動と情報発信、②CN都市ガスの普及促進、③エネルギー供給におけるレジリエンス強化、④脱炭素化、省エネルギー化―に関する内容になっている。

同社は、ゼロカーボンシティさがしの「推進パートナー」にも参画。80を超えるパートナー企業と情報交換を行う。ガスによる脱炭素化を広くPRできる機会となり、都市ガス化や省エネ機器の採用につなげたい考えだ。6月にはZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)プランナーとしても登録した。公共施設などの改修時の脱炭素化を支援していく。

沼沢実取締役営業部長は「脱炭素化は時代の潮流。ガス会社としてどのような提案をしていくか、さまざまな情報交換の中でヒントを得て、佐賀市の目標達成に貢献していきたい」と話している。