【特集2】地域冷暖房で進むAI活用 人手を離れた運用で改善進む

2023年12月3日

【東京都市サービス/高砂熱学工業】

デジタル化の波は電力インフラだけにとどまらない。地域冷暖房でもAIを活用したデジタル運用が進む。

電力インフラにおけるAIを活用したデジタル化が進むのは火力発電所や電力系統の分野だけではない。地域冷暖房といった大規模なインフラ拠点でもその取り組みは進んでいる。

これまでの地冷の運用では、運転手が熱源設備の運転スケジュールを立案し、手動で計画値を入力。365日、24時間の対応で安定運転に努めてきた。自ずとベテラン運転員の「人の手」に頼ってしまうケースが多かった。

そうした中、運用の高度化を目指して東京都市サービスと高砂熱学工業は、地冷向けにAIを活用した熱源プラントの自動運転システムを開発した。国内最大級の地冷規模を誇る晴海アイランド地区で安定稼働や省力化を確認した。

システム開発の四つの特長 蓄熱運用の改善に期待

今回、両社が開発したシステムは、AIの一種である「ルールエンジン」を活用した熱源自動運転システムで、既存の中央監視盤に接続して運転する。高砂熱学がシステムを開発し、東京都市サービスが運転ノウハウと実証フィールドを提供した。

システムは四つの特長を備えている。一つ目は熱負荷予測機能と蓄熱目標量の算出機能だ。気象予報値と過去の熱負荷データを組み合わせて翌日の熱負荷を予測する。予測した熱負荷をもとに目標量を産出する。

二つ目は熱源の運転計画機能とスケジュール出力機能だ。熱源の保守計画や電力需要などの制約条件を考慮して、目標の蓄熱量を製造するための熱源の運転計画を演算する。計画をもとに、運転スケジュールを自動で中央監視盤に出力する。

三つ目が任意の電力デマンドの制御機能だ。運転計画の立案に際して、任意の目標電力デマンドに制御する。四つ目は既設の中央監視盤との連携機能だ。既設の自動制御機能を生かしたまま、このシステムからは熱源の起動・停止のみを制御する。

両社の実証によって三つの成果を得た。熱の負荷実績と差が生じた場合も1時間ごとの補正機能によって適正に運転したことを確認。省エネ性についても実証できた。「人手」のケースのシステムCOPは4.2だったが、AIによるデジタル制御では、4.3と同程度となった。さらに人手の業務負担はおよそ50%程度を低減した。

ヒートポンプと蓄熱槽を組み合わせた運用では、これまでは深夜の電気を活用して蓄熱槽に熱をため込み、昼間のピーク需要に合わせて放熱するような、割と単純な運用スタイルが一般的だった。

しかし最近では、電力の需給ひっ迫への対応(デマンドレスポンス)や、再生可能エネルギーの余剰電気を蓄熱槽にて吸収するような従来にはない複雑な運用スタイルを求められるケースも増えている。AIを活用した運用によって、さまざまな社会課題を解決していきそうだ。

AIを活用し熱源プラントの実証を進めた晴海地区