【特集2】デジタル変電所で実績重ねる データ分析の高度化で改善へ

2023年12月3日

【東京電力パワーグリッド】

東電PGが「次世代の施設」と位置付けているのが南横須賀変電所だ。主要な設備にセンサーを備え付け、新時代の運用につなげようとしている。

広大な太平洋を望む神奈川県・三浦半島の先端エリア。ここに東京電力パワーグリッド(PG)が4年前に更新した「デジタル変電所」が立地する。東電PGが次世代インフラの先駆けと位置付けている南横須賀変電所だ。変電所の設備にセンサーを取り付け、さまざまなデータを常時取り込みながら遠隔で状態監視している。東電PGは運用実績を重ね、インフラ運用のDX戦略を実行に移す。これまでの運用・保全の概念を覆すことはもちろん、設備工事の工法まで大きな変革をもたらすものとして期待されている。

JERAの大型電源を受電 潮流安定化の重要拠点

変電所の隣には、JERAの大型石炭火力がある。ここで発電した電力を、南横須賀変電所(27万5000V/6万6000V)で一手に受け取り、三浦半島以北へと送電する。系統潮流の安定化を支える上でも重要な拠点だ。そんな役割を担うこの変電所では、一部の設備に経年劣化の課題を抱えていた。そこで、建屋に格納されていた全ての開閉設備と屋外に設置されていた4台の変圧設備のうち2台を解体。開閉設備はガス絶縁開閉装置に、変圧器は全体容量を変えずに新設の1台へと更新した。その際、全体の工事コストを鑑みて屋内設置ではなく全てを屋外設置とした。4年前のことだ。

更新の際には、次世代運用を志向すべく、デジタル変電所へと仕立てた。東電PG工務部変電技術担当の塚尾茂之部長は、南横須賀の取り組みを次のように説明する。「主要設備であるガス絶縁変圧器(GIT)とガス絶縁開閉装置(GIS)にセンサーを内蔵させた。抵抗値、油面位置、ガス圧力、密度、温度など、そこから取り出すデータを集約装置に集め、いったん下位系サーバーに伝送する。さらにそのデータを、上位系となる社内独自のネットワークに吸い上げる仕組みを構築した」

従来は、設備からの警報が上がったり、故障して初めて現地に出向くなど、突発的な対応に苦慮していたが、今回の取り組みで遠隔での状態監視が可能となった。4年近くにわたるデータ蓄積によって、今後は設備挙動のトレンドをAIで自動分析したり、予兆管理のアルゴリズムを開発する。そして設備の延命化や現場への出向回数削減などの業務改善につなげていく。こうした設備ごとの状態監視だけでなく、変電所全体をAIで異常診断する仕組みを東電PGではARAAM(アラーム)と呼んでいる。このシステムにドローンや、ウェブカメラ、集音マイクなどを組み合わせながら、多様なデータを集約していく方向だ。

工事面でもデジタル化 今は産みの苦しみ

東電PGは設備の設置工事でもデジタル化を進めている。建築業界では一般的な「ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)」と呼ぶ技術を取り入れようと検討している。設置エリアや設備そのものを3Dデータに落とし込み、現場での搬入経路、設備同士や充電部との離隔距離、配置など、従来は現場に出向いて確認していた作業を、BIMの点群データを測量することで現場出向せずに3Dで正確に計測できる。

「工事期間を短縮できる。これは工事による電力供給の停止期間の削減を意味する。実際、南横須賀ではGISの据え付けに充電部接近への危険防止として、当初、23日間の送電線停止期間の予定だったが、BIMによって充電部への正確な離隔距離を把握し、危険防止停止を6日間に短縮した。また他地点の地下変電所ではGIS回線の増設工事でもBIMを活用した。従来であれば、現場合わせで加工していたガス配管を3D計測で正確に位置を把握。あらかじめ工場で加工のうえ現場工数を削減する『プレハブ化』で、現場での配管接続工数を60%削減した」(塚尾氏)

東電PGの変電設備は、都心部の敷地面積が狭い場所や地下に据え付けられているケースがとりわけ多い。今後、リプレースを控える設備も多くあり、BIMの活用は欠かせないものになるだろう。

「デジタル化の取り組みは待ったなしだが、今は産みの苦しみだと思っている。将来的には得られたノウハウを生かして事業領域の拡大につなげていきたい」と塚尾氏は力を込めた。

デジタルを実装する南横須賀変電所

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