【特集3】エネルギー会社の不動産事業 資産・知見生かし国内外で活発化

2023年12月3日

環境に配慮した不動産事業を積極的に展開するエネルギー会社が増えている。エネルギー分野の知見を生かすとともに、顧客や地域のニーズに応える。

2019年から本格化したコロナ禍以降、不動産トレンドが目まぐるしく変化している。その要因はリモートワークの増加や環境に優しい住宅への需要の高まり、テクノロジーの進化などさまざまだ。

こうした流れを受け、エネルギー業界の中でも不動産事業を展開する企業が増えてきた。具体的にはグループの資産の活用やエネルギーに関する知見を生かした住宅事業、海外事業などだ。

ESGに基づいた開発 人と環境に優しい住まい

1963年に「緑とやすらぎのある住宅都市づくり」を目指して「森林都市株式会社」として発足した九電不動産。九州電力の子会社となった後は、グループ一体で不動産事業を強化してきた。

同社は住宅ブランドコンセプトとして「E-QUALITY(イークオリティ)」を掲げている。「これからの人と地球に、快適な住まいであること」を重視し、人や地球に優しい快適で経済的な暮らしであること(E-COLOGY)、信頼のエネルギーサービスによる安心を届けること(E-NERGY)、心を動かす安らぎや生活シーンを描くこと(E-MOTION)の3点を打ち出している。

同社が手掛ける分譲マンション「グランドオーク」シリーズは、高い環境性能を有し、カーボンニュートラル(CN)の実現に貢献する。オール電化や断熱構造はもちろん、Low-E複層ガラスや24時間換気システムなどを採用。一部の物件を除き、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の認証を受けている。家計にも環境にも優しい住まいとして人気を博している。

中部電力が主要株主の日本エスコンは、総合不動産デベロッパーとして幅広い事業を手掛けている。具体的には、分譲マンション・戸建住宅、商業・物流施設、オフィス、ホテル、賃貸レジデンスなどの開発、プロパティーマネジメント、企画コンサルティング、マンション管理、リノベーション事業などだ。20年1月には、北海道日本ハムファイターズ新球場周辺街づくりである「ボールパーク構想」に参画。新球場のネーミングライツを取得している。

その経営戦力の一つに「ESG推進による社会課題への対応」を掲げている。環境に配慮したZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)や、地域の活性化を目指した地域密着型商業施設「トナリエ」の開発を進めている。また次世代型スマートハウスやコネクティッドホームなどの共同研究も行っており、暮らしの環境エネルギーやAIの活用による次世代の街づくりにも取り組んでいく。

IoT技術で省エネかつ経済的なエネマネを行う

会社ごとに特色ある事業展開 顧客や地域特性を深く理解

大阪ガスの子会社である大阪ガス都市開発は、大阪ガスビルディングをはじめとするグループ会社のビル管理業務だけでなく、一般顧客向けオフィスやマンションも手掛けている。

2000年代以降は、関西圏だけでなく首都圏にも進出し、賃貸マンション「アーバネックス」と分譲マンション「シーンズ」を展開してきた。SDGsやCNへの対応として、「シーンズ」ではZEHオリエンテッドを標準採用している。家庭用燃料電池のエネファームも採用しており、創エネも可能だ。

同社の不動産開発では、物件の快適性や高級感、サービスといった付加価値の提供を重視している。顧客に対して住まいに関するアンケートを実施し、その結果をもとに商品企画を行うことで、ニーズを取り込んでいる。とりわけ分譲マンションでは、入居後も個別に暮らしや快適性などについてヒアリングを行い、のちの開発に生かすことで物件の価値を高めてきたという。

成長分野である倉庫など物流にも参画する

賃貸と分譲にフィービジネスを加えた3本柱で事業を展開するのは、関電不動産開発だ。フィービジネスでは私募上場不動産投資信託(REIT)を扱う投資会社「関電不動産投資顧問」を設立。REITとは、投資者から集めた資金で不動産への投資を行い、そこから得られる賃貸料収入や不動産の売買の収益を投資者に配当するというものだ。

また同社では海外事業にも積極的に取り組んでいる。GDPの伸び率が日本よりも高い北米、豪州、タイの3カ国で展開。タイでは現地デベロッパーと組んで住宅を建設している。海外事業を展開する際には、カントリーリスクへの注意が不可欠だ。カントリーリスクとは、投資している国の経済や政治など不安定性に伴う市場の混乱・下落といった不確実性を意味する。こうしたリスクを踏まえた上で、投資を行う必要がある。

豪州での不動産開発を進めるのは、関電不動産開発だけではない。東京ガス不動産は、豪州での分譲マンション事業「Bloom(ブルーム)1」への参画を発表。今年2月に参画した「BANKSIA(バンクシア)」に続く豪州2件目の事業となる。

バンクシアとブルーム1は「グレンサイド」プロジェクト内の一環だ。同プロジェクトは南豪州の州都アデレードからほど近い、好立地で希少な大規模再開発プロジェクト。広大な敷地内に数多く存在するヘリテージ(歴史的建造物)の保全・活用など、環境や社会との調和を重視した住宅開発を行う。ブルーム1は郊外の戸建てから居住面積を縮小して住み替えるシニア層をターゲットに、魅力的な暮らしを提案する。そのためには住む人や地域、社会が求めることを深く理解する必要がある。

例えば、豪州では地元住民同士のつながりが重視されるため、ラウンジなどの共用施設を充実させ、コミュニティー形成を後押しする。また太陽光パネルやEV充電器の設置、再生可能エネルギー由来の電力を各住戸で使用できるといった環境への配慮にも重点を置いた。こうしたコンセプトが好評で、完成を待たずして完売した。

国内外問わず活発化するエネルギー会社による不動産開発。その動向に関心が高まる。