【特集2】待ったなしのDX戦略 運用高度化で改善進める

2023年12月3日

設備運用の改善や保守保全の高度化に向け、電力インフラ事業者のDX戦略が進んでいる。

巨大なインフラを支える小さなデータ群が、ビッグデータとなって次世代の運用を支える。

発電所や送電施設などの電力インフラの運用に変革の兆しが見えている。大規模なエネルギー設備を保有する事業者が今、DX戦略を進め運用の高度化にトライしているのだ。

戦略を具現化するために、事業者は発電プラントや変電設備などさまざまな設備にセンサーを設置し、主に四つのステップを踏んで高度化を進めている。①センシングによりデータを計測、②データを整理・管理、③データ分析・予測、④設備の最適制御や保安力の向上といった実運用の高度化―だ。こうしたサイクルの随所にAIを活用しながら収益性の改善につなげようとしている。

デジタル技術を駆使した南横須賀変電所の設備

遠隔で設備の状態監視 電力インフラはデータの宝庫

東京電力パワーグリッドは4年前、経年化を背景に南横須賀変電所の設備を更新。変圧器などの主要設備にデジタル技術を実装し、電圧、電流値などの細かいデータを蓄積している。データ集積には国際通信規格に準拠した通信ネットワークインフラを整備することで、特注仕様を排除してコストを抑えている。こうした運用実績をもとに、順次「デジタル変電所」の拠点数を拡大する方針だ。「設備をデジタル化し、さらに業務をデジタル化することで次世代の運用に挑戦したい」(東電PG)

東電PGがDX化に期待することは、通常の運用改善だけではない。例えば災害時での対応だ。設備は健全か不具合が生じているのか、不具合はどのような箇所でどのような規模か―。設備からのセンサーの挙動を遠隔で監視することで詳細を把握できる。わざわざ人員が現場へ出向く必要はない。

東電PGはデータ集約のプラットフォームを構築しており、今後はドローンによる空撮画像データ、集音マイクによる音声データなど、さまざまなデータを集約していく。次世代の運用につなげるために、そうしたデータをいかに加工し料理するかが、今後、事業者にとって腕の見せどころとなる。

課題もある。増え続けるデータ量を管理するためのサーバーインフラとそれに伴う電力消費の増加だ。人の手を減らすことはできても―。そんなジレンマに陥らないためにも、「データの質と量の最適解を模索している」(同)。

いずれにしても、DX戦略は緒に就いたばかりだ。今回の特集では、火力発電や電力系統、あるいは地域冷暖房のような大型設備を扱う事業者のDX戦略をレポートする。