循環型の地産地消エネルギーへ 原子力由来水素を発電所内で利用

2023年12月6日

【関西電力】

関西電力は、原子力発電の電気で製造した水素を原子力発電所内で利用する実証を始めた。

カーボンニュートラル社会を目指す上で、高まるCO2フリー水素へのニーズに的確に対応する狙いだ。

使用時にCO2を排出しないことから、カーボンニュートラル(CN)社会実現の鍵を握る次世代エネルギーとして期待されている水素。自動車など輸送の動力源や産業用、発電燃料といったさまざまな用途で水素を活用するには、安価・大量に製造し輸送するサプライチェーンの構築が急務であり、各所でそれに向けた挑戦が始まっている。

高浜3号機のボンベ室に搬入された水素のカードル

製造時からCO2を排出しない再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」や、天然ガスや石炭といった化石燃料から製造しCCS(CO2の回収・貯留)と組み合わせる「ブルー水素」など、多様な資源から製造できることも水素のメリットの一つ。その中で、関西電力が昨年度から取り組んでいるのが、原子力由来水素の製造と利活用だ。


製造から利用までを追跡 CO2フリーの要請に対応

昨年度は、福井県敦賀市と共に、美浜・高浜・大飯発電所で発電した電気を同市の公設市場に設置した水素ステーションに供給して水素を製造する実証を実施した。トラッキング(追跡)システムにより、発電日と水素を製造した日時、利用先などを紐付けすることで、水素が原子力発電の電気によって製造されたことを特定。約3か月間の実証期間中に63㎏の原子力由来水素を製造し、3・7tのCO2削減効果を得られたことを確認したという。

昨年度に行った実証では、製造した水素を燃料電池車(FCV)や専用容器「カードル」に供給していたが、この10月には、循環型の地産地消エネルギーとして、原子力由来水素を原子力発電所内で利用し、製造から利用までの一連の流れをトラッキングする実証に着手。同月26日には、高浜発電所において、1本当たり7㎥の水素を充填した容器30本を1組にまとめたカードルを、3号機のボンベ室に運び入れ設置する様子を報道陣に公開した。

実証のイメージ

原子力事業本部原子力企画グループの小島庸光マネジャーは、「CN社会実現に向け、将来、カーボンフリー水素への要望が高まることが予想される。トラッキングにより原子力由来であることを明確にすることで、こうした要望に的確に応えることができる」と、同実証に取り組む意義を強調する。

原子力発電所ではもともと、発電する際に熱を持つ発電機の冷却用に水素を利用しているほか、1次冷却材の溶存酸素濃度が上昇し配管の応力腐食割れを抑制するためにも、水素を体積制御タンクに充填している。これを原子力由来水素に置き換えることで、CO2排出量を抑える効果も狙える。

実証期間の来年3月31日までに、発電機の冷却用としてカードルを9回計119㎏、体積制御タンクには2回計12㎏の水素を3か所の発電所内に運び入れる計画だ。

同社は、「ゼロカーボンロードマップ」において、「原子力エネルギーを将来的には、その電気や高温熱を使った水素製造にも活用し、さらなる可能性の拡大を図る」ことを掲げ、今後、同実証を通じて原子力を活用した水素サプライチェーンの構築実現に向けた検討を重ねていく方針。

「原子力はCO2フリーのエネルギー。その立地地域である嶺南地域を、CO2フリーの先進地域として価値を高めていくことに貢献していきたい」と小島マネジャー。CNの取り組みにより、地域全体の魅力向上に寄与していきたい考えだ。

1 2