【特集2】強い責任感で生活インフラ支える 金沢ターミナルが供給面で底力

2024年5月3日

【アストモスエネルギー】

「LPガスのサプライチェーン(供給網)を構成する関係者全員が『生活インフラを途絶えさせてはいけない』という強い責任感で結びついていることを実感できた」

能登半島地震に伴う津波警報の発令で北陸地方に緊張が走る中、アストモスエネルギーの宮崎博典・サプライ&ロジスティクス部長は、発災当時をこう振り返る。

北陸地方は、LPガスの二次基地「金沢ターミナル」(石川県金沢市)を抱える主要エリア。1月1日の発災当日はターミナルの稼働休止日だったが、出荷の継続に向けては予断を許さない状況となった。素早く基地運営の協力会社に連絡し、地震の影響を確認。設備に問題がなかったことから、予定通り翌日には稼働を再開した。

金沢ターミナルが大きな役割を果たした。

具体的には、どのような動きを見せたのか。金沢ターミナルの人員を増員するため千葉県市川市や長崎県松浦市に構えるグループ会社などに対して応援を要請した。LPガスの輸送を手がける事業者へも協力を求め、輸送路を多様化しながらタンクローリーによる供給を止めないようにした。

一方、企業の垣根を越えてLPガスを相互に融通するという仕組みも実現した。七尾市には、海外からの輸入船でLPガスを調達して貯蔵するENEOSグローブガスターミナル運営の「七尾ガスターミナル」がある。同ターミナルは地震の影響を受けており、出荷の制限を受けていた。金沢ターミナルがLPガスの受け入れと出荷を手助けし、顧客への供給が途絶えないよう支えた。

アストモスエネルギーは、協力関係にある元売りなどの関係者間で協議しながら、「被災地の供給網を支える」という使命を共有し、他社との連携プレーを繰り広げた。


膨れ上がる冬場の需要期 限られた玉の差配に力

金沢ターミナルでは、冬場の1日の取扱量は通常300t程度だが、この時は800~900tに膨れ上がったそうだ。

発災後の対応が円滑に進むよう奮闘した一人が、アストモスエネルギー国内事業本部需給部の相馬健洋・副部長兼受注センター所長(肩書は当時)だ。相馬氏は、医療機関などの緊急度の高い施設のニーズを見極めながら、「限られた玉(LPガス)の差配に全力を傾けた」と強調する。

自立稼働が可能な「分散型エネルギー」のLPガス。そうした強みを継続的に発揮できるよう定期的に防災訓練を重ねてきたことも、被災地で生きた。例えば、LPガスの基地に給電に必要な電源車を接続するという訓練に取り組んできた。

「LPガスの基地が出荷停止に追い込まれても、関係者間で連携して瞬時に対応することができた」と宮崎氏。同社は能登半島地震で得られたノウハウを生かし、今後とも供給網の「レジリエンス(強靭性)」を一段と追求していきたい考えだ。