【オピニオン/8月3日】第6次エネルギー基本計画に向けて動き始めた経産省

2020年8月3日

福島伸享/前衆議院議員

7月3日梶山経産相の「脱炭素社会の実現を目指すために、非効率な石炭火力のフェードアウトや再エネの主力電源化を目指していく上で、より実効性のある新たな仕組みを導入すべく、検討を開始し、とりまとめるよう、事務方に指示した」という会見での発言が、さまざまな波紋を呼んでいる。

再エネ推進派の中からは、「非効率な」旧式のものに限定されていて「石炭火力ゼロ」を目指さない事実上の温存策であるとの批判もある。しかし、全発電量の1/3を非効率石炭火力が占める沖縄電力など、電力会社によっては収益構造の大きな転換をもたらすものであるから、大きな一歩であると言える。JERAや関電と比べて地方の電力会社は非効率な石炭火力に頼る割合が高いから、電力会社の再編の起爆剤になる可能性もある。

非効率石炭火力のフェードアウトと並行して、再エネ主力電源化に向けて、分散型電源の導入加速化策や将来の電源ポテンシャルを踏まえた全国大の系統整備の在り方の検討も行われることとなった。これらも、電力システム改革後の新しい電力供給体制の実現に伴うものであり、既存の業界構造にそれなりのインパクトを与えるものとなることであろう。

梶山経産相は、7月14日の幹部人事の発表をする記者会見で、他の政策分野に先駆けて一丁目一番地として「エネルギー政策を思い切った脱炭素に転換してまいります。このために、エネルギー政策、産業技術環境政策の経験の長い保坂貿易経済協力局長を資源エネルギー庁長官に登用します」と発言していることからも、ポスト安倍政権を睨んで経済産業省はかなり本気であると言える。

前回の本コラムで書いたとおり、官邸主導の極みの安倍政権ではエネルギー政策はあまり進展せず、むしろエネルギー政策の転換は政権交代時のドサクサなど政治が大きく関わらない時期に行われてきた。旧動燃出身の梶山経産相は、エネルギー政策に一定の知見はあるとはいえ、強い政治的意思をもって政策を転換するようなタイプの政治家ではない。これらの一連の梶山経産相の発言は、安藤次官率いる経産省の事務方が綿密に振り付けたものとみて差し支えないだろう。

「官邸官僚」を送って安倍政権を中核となって支えてきた経産省への世の中の風当たりは、政権の新型コロナウイルス対策の迷走とともに強くなっている。安倍政権の終焉ととともに、「経産省解体」論も出かねない状況である。そうした中で、来年の第6次エネルギー基本計画の策定に向けて、どれだけ本質的な政策議論を展開され、小手先ではない大胆な具体策が提示されるのか、その行く末を期待して見守りたい。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2009年衆議院議員初当選。東日本大震災からの地元の復旧・復興に奔走。