【特集2】環境に配慮しリーズナブル 国内初「E7」ガソリン販売

2024年6月1日

石油製品を扱う中川物産はバイオエタノールを7%混ぜたE7を投入した。

エタノール入りガソリンが日本に浸透する可能性や戦略について聞いた。

【インタビュー】中川秀信/中川物産代表取締役

なかがわ・ひでのぶ 1976年生まれ。大学卒業後、韓国へ留学。2000年中川物産入社。03年取締役、06年から現職。中川物産グループを束ねるN-Holdingsの代表取締役を兼務。

―地球温暖化防止に役立つ燃料として期待を集める「E3」の国内販売に、2011年から商業ベースで初めて乗り出しました。理由を聞かせてください。

中川 もともと当社は、現在では普通に流通している硫黄酸化物の排出が少ない超低硫黄軽油を輸入・販売するなど、環境対策に力を入れてきました。石油製品を持続可能な形で社会に受け入れてもらうためにも環境に良い経営を目指していたところ、環境省の実証事業として、大阪府がエタノール混合ガソリンの製造・販売に取り組んでいるのを知り、「これだ」と考えました。そこで環境省のエコ燃料利用推進補助事業に応募し、幸い採択されました。補助金を活用して、エタノールとガソリンを混合する施設などを整備し、販売にこぎ着けました。

―当時、石油業界はエタノールと石油系ガスのイソブテンを合成した「ETBE」を配合したガソリンを環境に良いバイオガソリンとして販売し始めていました。ETBE配合ガソリンは検討しなかったのでしょうか。

中川 CO2の削減は石油関連業界にとって重要な課題であり、当社もその流れに歩調を合わせて、ETBE配合ガソリンを検討しましたが、品質は良いものの、値段がかなり高く、扱っても採算が合わない恐れがあり、対応に苦慮していました。一方、大阪府の実証事業で直接混合の「E3」でも品質的に問題がないことが分かり、自社の施設でエタノールを直接混合するE3にチャレンジしようとなったわけです。


E3販売は100店舗に 対応車種も増加傾向

―なぜ3%だったのでしょう。

中川 いまは10%まで混合できるようになりましたが、当時は「揮発油等の品質の確保等に関する法律」(品確法)で上限が3%だったのです。最初はジャマイカ産のエタノールを輸入しましたが、数年後以降は米国産エタノールを韓国の大型タンク経由で輸入しています。E3を製造する自社の施設は名古屋市と大阪市にありますが、E3の販売ガソリンスタンド(SS)は愛知県を中心に約100店舗に増えました。

―E3の販売は画期的なチャレンジだったわけですね。ただメディアでは大きなニュースとなっていません。宣伝はあまりしなかったのでしょうか。

中川 当時はまだエタノールを混ぜたガソリンといっても、環境に良いといった認知度は低く、スタンドで無用な混乱を避けるためもあって、あまり宣伝はしませんでした。石油業界ではETBEを推奨していたこともあり、あまり業界を刺激せず、足並みを合わせたいという意識もありましたね。せっかく始めたE3にネガティブなイメージが抱かれないよう注意深く進めていたという感じでしょうか。

―昨年6月から日本で初めて「E7」を販売し始めた理由も教えてください。

中川 13年前のE3のときと違って、最近は社会全体、そしてお客さまの環境意識が高まってきました。そうしたニーズに応えて、他社にない独自の商品を新たに提供したいとの思いから、新商品のE7を出しました。その背景には、これまでの当社の取り組みを応援してくれる顧客が増えてきたことに加え、E7もしくはE10に対応する車が増えてきたことも挙げられます。

ディスペンサー前にはE7の表示がある

―E7は通常のガソリンと比べて1~2円安価です。なぜでしょうか。

中川 ガソリンに混合するエタノール分は期限つきながら、ガソリン税が免除されています。つまりエタノールの混合比率が高いほど安くなる仕組みです。環境負荷が低く、価格もリーズナブルだという強みをより打ち出していきたいと考えています。


米国もE7販売に期待 エネ安全保障に寄与

―昨年6月のE7販売開始時には、ラーム・エマニュエル駐日米国大使が駆けつけました。

中川 最初は「こんな小さな一事業者に本当にいらっしゃるのかな?」という気持ちでしたが、実際に来ていただき感動しました。エタノールの活用は石油資源の中東依存を減らす意味で日本のエネルギー安全保障に大きく貢献できます。米国産エタノールの活用は、日米の同盟を意識するような感覚もありますね。

―4隻のタンカーを所有するなど、パワフルな経営姿勢が印象的です。

中川 当社の設立は1971年。私の父である中川信男会長が創業しました。過去約50年を振り返ってみますと、規制と既得権益との戦いだったような気もします。石油の元売り会社と良好な関係を保ちながら、独立性のある存在でなければならいという考えの下、輸入・輸送ルートの開拓、貯蔵タンクの建設、スタンドの拡大もしていかねばなりませんでした。

E7発売時にエマニュエル大使が来社した

これまでと同様に一歩一歩実績を積み重ねていきたいと思いますが、エタノールはエネルギーの安全保障にとって重要な選択肢の一つです。今後、EVは増加するでしょう。ただ、地域特性や消費者ごとの利用方法は異なるため、当然求めるエネルギーも異なります。今後も多くの優位性を持つ液体燃料は一定のシェアを占めると考えており、その中でエネルギー供給会社としての責務を果たすためにも、これまで以上に積極的に環境対応製品を供給していきたいと考えています。