CCSで社会の脱炭素化を強力後押し 実用化への道を連携プレーで切り開く

2024年6月6日

【関西電力】

CO2の回収から地中に貯留するまでのプロセス構築を目指す関西電力。

事業化を視野に回収技術を磨き、船舶輸送の実証試験にも参画する。

国内の火力発電所などから排出されたCO2を分離・回収し、貯蔵や輸送を経て地中深くに閉じ込める―。関西電力はそうした「CCS」のバリューチェーン(価値連鎖)を構築することを目指し、エネルギー事業大手と組んで検討に乗り出した。分離・回収技術の実用化に向けた道筋を切り開こうと、実証試験もさらに積み重ねる計画だ。脱炭素化を後押しする多彩なCCSのプロジェクトが大きく前進しようとしている。

大阪湾近くに位置する工業地域で知られる「堺泉北エリア」。この地を舞台にCCSのバリューチェーンづくりに挑むのが関電とコスモエネルギーホールディングスで、昨年10月に共同検討を始めた。両社が同エリアで運営する事業所から排出されるCO2を回収し貯蔵・出荷する工程にとどまらず、それを輸送する方法や貯留候補地の調査にまで踏み込む計画だ。

関西電力舞鶴発電所内にあるCO2分離・回収試験設備
提供:川崎重工業


バリューチェーン構築 社会実装促進に弾み

背景には、脱炭素化という世界の潮流がある。こうした動きを踏まえて関電グループは今年4月、2050年を見据え温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボン」の道筋を示すロードマップを改定した。それに沿った展開は順調に進んでおり、「25年度時点で発電によるCO2排出量半減」という目標を2年前倒しで達成する見込みだ。

重点分野の一つが、火力発電のゼロカーボン化を後押しするCCSだ。分離・回収し貯留したCO2の有効利用も含めた「CCUS」まで踏み込み、具体例として堺泉北エリアでの共同検討をロードマップに盛り込んだ。CCUSは30年ごろの導入を視野に検討を進め、50年に向けてCO2の分離・回収量の拡大を目指す戦略を描く。

関電火力事業本部の北澤京介・火力開発部長は「CCSの社会実装はバリューチェーンを構築することで実現する。各工程で強みを持つ多彩な企業と手を組み、CO2回収を面で広げる取り組みを着実に進めていきたい」と意欲を示した。

CCSの事業化に向けた関電の取り組みは長く、三菱重工業と共同でCO2の分離・回収に必要な技術を開発した1990年代までさかのぼる。両社はLNG火力による発電過程で出る排ガスからCO2を吸収する物質「アミン」を含む吸収液を用い、実証試験を重ねてきた。

両社は今後、姫路第二発電所(兵庫県姫路市)内に建設するパイロットスケールの試験設備を活用し、25年度から実証試験を始める計画。1日当たり5tのCO2を回収できる設備だ。

さらに培った技術や経験を生かし、今年1月から関電舞鶴発電所(京都府舞鶴市)で、川崎重工業などが進めるCO2分離・回収の実証試験にも協力。これは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業で、地球環境産業技術研究機構(同木津川市)が開発した個体吸収材を循環させて1日約40tを回収することに挑む。


試験データを収集・分析 国際ルールづくりにも貢献

「CCSバリューチェーンに必要な最後の技術ピース『CO2の低温輸送』にも力を入れる」(北澤氏)方針だ。日本CCS調査(JCCS)を代表とするコンソーシアムが世界に先駆け取り組むCO2の船舶輸送に着目した実証試験へ参画。NEDOからの委託事業で、舞鶴発電所から出るCO2を同発電所構内の基地で液化し、主に北海道の苫小牧基地との間を輸送船で移送する。

北澤・火力開発部長(左)と脱炭素技術グループの羽原チーフマネジャー

CO2の液化設備や貯蔵タンクなどを備える舞鶴基地は今年9月に完成予定。その翌月からさまざまな条件下で液化CO2を輸送する本格的な試験を立ち上げる。そこで集めた試験データの分析結果は、安全な輸送に必要な規格や設計基準の検討のほか、液化CO2を長距離で大量輸送する際に求められる国際ルールづくりにも生かされる。関電は試験への参画を通じて、CCSの普及に向けた取り組みを加速していく考えだ。

ただ、CCSの事業化に向けた道のりは平坦ではない。建設や設備にかかるコストが見通しにくい上、貯留地の確保に向けた調査や法整備なども途上にあるからだ。とはいえ、CCSは産業競争力に直結する有望技術だけに、社会実装に向けた国際競争が激化する方向にある。「未開拓領域を先行し切り開くファーストムーバーとして、多様な脱炭素技術の可能性を追求したい」と火力開発部門脱炭素技術グループの羽原英史チーフマネジャー。そんな使命感を強める関電の展開から目が離せない。