ドローンでインフラ業務の革新を支援 一貫体制でサービスの全国展開に弾み

2024年6月10日

【九州電力】

ドローン事業の拡大に向けて立ち上げた「九電ドローンサービス」。

AIなどの最新技術を組み合わせ、インフラ分野に新風を注ぐ。

ドローン(小型無人機)を工場やプラントをはじめとする幅広いインフラ設備に役立て、点検などの現場業務を効率化する―。九州電力はそんな強みを発揮し、成長が見込まれるドローン市場の開拓に乗り出した。市場開拓のけん引役は4月に設立した子会社「九電ドローンサービス」(QDS、福岡市中央区)。QDSは先進技術を駆使してサービスを拡充し、ドローン事業の全国展開を目指す。

九電は2016年から、同社グループが抱える電力などのインフラ設備の点検や災害時の空撮などの場面にドローンを活用。5年以上の累計で点検・測量実績は170件以上に達した。培った実績を土台に19年7月からは、ドローンの利用を支援するサービスを九州全域に展開してきた。

            狭い洞窟で威力を発揮するドローン

ハードとソフト一体で 多様な課題解決を後押し

そこで培った経験や知見を生かして立ち上げたのが、今回のQDSだ。九電ドローン業務グループの立石靖記グループ長(QDS取締役)は、「ドローンにソフトを組み合わせた『オールインワン』で顧客の課題解決を支援できる強みを発揮し、ドローンソリューションの提供先を広げたい」と意気込む。

ハード面では、さまざまなドローンの活用ニーズに対応するため、多様な最先端機器をフル活用できる体制を構築。10メーカー、140台以上もの機体を所有している。

ソフト面では、独自開発のソフトを展開。ドローンの自動飛行を実現するプログラムソフトに加えて、機体が見通せるポイントを検索してカバー範囲を表示するシステムを用意している。画像データの解析技術を駆使できることも売りだ。

さらに、ソリューションを支える組織体制も強化。ドローンを安全に飛行させる技能を持つ国家資格「2等無人航空機操縦士」の取得者を、現在の10人以上から50人以上に増やすことを計画している。

ドローンの展開先の一つが、インフラ設備の点検だ。既に「点検業務を効率化しコストを削減したい」「人の立ち入りが難しい場所の点検を省力化したい」といった顧客の声に応えて、活用事例を増やしている。

例えば、GPS(衛星利用測位システム)の電波が届かない狭い空間でも自律飛行できる 球体型の特殊なドローンを駆使し、作業員に代わって工場や煙突の内部を安全に点検するサービスを提供。さらに、広大な範囲を対象とする点検や水中点検などで威力を発揮するドローンも扱っている。ドローンで空から地上を素早く高精度に測量し、地形の状況を把握するサービスも提供可能だ。

ドローンに新しい技術を組み合わせる展開にも意欲的。立石グループ長は「パートナーと連携し、ロボットやAI(人工知能)などを活用した新しいサービスの開発や提案にも力を入れたい」と力を込めた。

パートナーと先進事例 実績土台にDX市場開拓

すでに九電は22年、ソフト開発のオプティム(佐賀市)と連携し、ドローンとAIによる解析技術でダムの点検業務を高度化・効率化する成果を発表している。具体的には、九電がドローンによる測量で使う独自の自動操縦プログラムを、傾斜のあるダム遮水壁の壁面撮影に活用。その技術にオプティムが開発したAI画像解析を融合することで、1㎝単位で遮水壁のひびや表面に塗布された保護層の剥がれといった損傷を高精度に検知できるようにした。点検業務にかかるコストは約40%削減できるという。

ダムの遮水壁を点検するドローン

デジタル技術を業務の変革につなげるDX(デジタルトランスフォーメーション)の機運が幅広い業種で高まる中、DXをけん引するドローンのビジネス市場も拡大する方向にある。政府は、規制が求める目視や巡回などのアナログ手段を代替できる新興技術の普及を促しており、こうした動きを追い風にドローン活用を後押しする企業の出番も増えそうだ。

「空を見上げて、未来をカタチに」という経営理念を掲げたQDS。同社の本田健一社長は設立記念式のメッセージの中で、「先進的なドローン・ロボット技術をもとに、チャレンジと情熱を持って地域社会の課題を解決しワクワクするような未来を創っていきたい」と意欲を示した。QDSは、ドローンを工場やプラントのDXツールとして広げる先導役として存在感を放つことになりそうだ。