【特集2】多彩な地域エネ資源で脱炭素化 防災力向上と経済振興にも貢献

2024年7月3日

全国各地で分散型システムの先進的な活用事例が続々と登場している。

デジタルの力でシステム制御する技術や事業モデルの進化も著しい。

再生可能エネルギーによる発電設備やコージェネレーションシステム(CGS)などの多彩なエネルギー資源を一定の地域内に配置して最適に制御する―。そうした分散型エネルギーシステムの先進的な構築事例が続々と登場している。大規模な災害時にエネルギー供給が滞るリスクを軽減したり、各地で脱炭素社会づくりを促したりする要請が強まっているからだ。デジタル技術の進化も追い風に、分散型システムの出番が一段と増えそうだ。

大手電力も採用に踏み切ったCGS


地域に根差した再エネ イノベーションにも

政府が決定した2023年度版の「エネルギー白書」では、カーボンニュートラル(CN)を実現する観点から地域と共生した再エネを最大限に導入すると明示。FITやFIPなどの再エネ政策を総動員しながら、この分野のイノベーションを加速し市場を拡大する方針も示した。地域の再エネをコージェネなどの分散型エネルギー資源と組み合わせて利用しやすくする仕組みのあり方にも触れ、「検討をさらに深めていくことが重要」と明記した。

こうした動きに呼応するかのように、東京都内でも先進的な分散型システムが相次ぎ具体化している。一つが「日本橋一丁目中地区再開発」のエリアに自立分散型のエネルギーセンターを導入して周辺地域に電気と熱を供給する取り組みで、街の付加価値を高める先進的な挑戦として注目を集めている。

仕掛けるのは、電力小売りの東京電力エナジーパートナー(EP)と三井不動産が共同設立した三井不動産TEPCOエナジー(東京都中央区)。三井不動産と東電EPによる初の「スマートエネルギープロジェクト」で、26年度のエネルギー供給を目指している。

電気と熱の供給先は新規の再開発ビルに既存ビルを加えた約50万㎡規模のエリアで、日本橋1丁目で計画する商業施設やオフィスに届ける。ビルの地下部分に約1・6万kWの発電機を設け、ビルに入居する企業や店舗のエネルギー需要に応える。さらに「自立分散型電源」として、大型のCGSを採用。燃料は耐熱性能が高い「中圧ガスライン」からの都市ガスで、系統電力が停電時にもエネルギー供給を継続できるようにする。

CGSによる発電時に生まれる排熱は冷暖房に生かすとともに、効率的に運転計画を立案できるAIをエネルギーマネジメントシステムに取り入れたことも特徴。30分周期という短時間で目的に合わせた計画を導き出せる仕組みで、約25%のCO2排出量を削減する効果が見込まれる。人材確保が難しい運営面の省力化にもつなげる。

日本橋1丁目で実現するエネルギーシステムの流れ

オール電化に傾注してきた大手電力会社が、脱炭素化が叫ばれる今この時期にCGSを手掛ける意味は大きい。というのも、現在構築した街のエネルギーインフラは少なくとも今後数十年にわたって継続運用されることになるからだ。大手デベロッパーの技術系幹部が言う。

「50年CN社会を見据えた時、これから構築するエネルギーインフラはそれに対応することが求められる。その観点から電化シフトの加速を予想する向きも多いが、現実的な選択はやはりエネルギーミックス。東電・三井不の取り組みが意味することは、50年時点でもガスインフラが重要な役割を担っているということだ」


AIでマネジメント進化 新たな潮流に乗り創意工夫

脱炭素化や防災力の向上を狙った分散型システムを構築するニーズは、地方でも高まっている。ごみ発電設備を生かして「地産地消電力」を供給する動きが広がっているほか、蓄電所を最適に制御するビジネスモデルも登場。AI搭載のエネルギーマネジメントシステムを生かすサービスも誕生した。

政府からは、GX(グリーントランスフォーメーション)による地域活性化の一環で、各地の再エネを活用した「分散型エネルギーのマスタープラン」の策定を支援する追い風が吹いている。技術面では、複数の分散型電源をデジタル技術で束ね、あたかも一つの発電所のように機能させる「VPP(バーチャルパワープラント)」を巡る取り組みが進展している状況だ。

デジタル化の進展を背景にデータセンター(DC)の需要が増える中、大都市に集中するDCの立地を地方に分散する取り組みも拡大。これに伴い、「DCとセットにしたエネルギー供給システムの引き合いも増えている」(分散型システム事業者)状況で、DXと連動する形で分散型システムの役割が増す方向にある。エネルギー大手やプラントメーカーなど関連各社が追求する多彩な「分散型ミックス」の最前線に迫った。