【特集2】廿日市市へ特定送配で電力供給 LNG基地の設備運用を改善

2024年7月3日

【広島ガス】

分散型コージェネレーションを活用した特定送配電事業の開始へ―。広島ガスが2022年8月に地元の廿日市市と結んだ「特定送配電事業に関する基本協定」の取り組みが本格的に動き出している。

広ガスが、大型船を受け入れる廿日市工場(LNG基地)に中型ガスエンジン(1000kW×2)を新設し、基地内需要向けに活用していた既存の大型ガスエンジン(5500kW×2)も駆使しながら、発電した一部の電気を廿日市市の特定の施設に向けて供給している。23年11月から10年間の長期にわたって供給していく。

「特定送配電事業とは、特定の地点向けに事業者自ら送配電網を整備・運用して、需要に応じて電力を供給すること。今回、供給するのは市本庁舎を含む3地点で、当社は各施設へ電力線を整備した。この特定送配電事業制度を活用することは両者にとってウィンウィンになる」。広ガスの梶原淳・経営企画部担当部長はこう話す。

新設した中型ガスエンジン

電力の供給元と需要地点がひも付いているとともに、新設のガスエンジンが非常用発電機としての機能も併せ持つことから、廿日市市側はBCP(事業継続計画)が強化される。クリーンな天然ガスを利用することで、CO2も削減できる。

広ガスにとっても、ガスエンジンを新設することは、将来的に基地運用全体のBCPにつながる。さらに既存のガスエンジンの運用改善にもなる。従来は余剰電力を新電力に販売していたが、このモデルは見通しが立ちにくかった。

「今回、両者が結んだ特定送配電事業は10年にわたる長期契約となっている。事業の予見性が高まるため、当社にとって安定的で無駄のない設備運用につながる」(同)。昼間のみ動かす大型ガスエンジンの余剰電力を市側に供給し、夜間の供給は新設の中型ガスエンジンが担う。


熱利用に工夫を凝らす 設備運用の改善に余念なし

こうしたコージェネ運用に代表されるように広ガスでは、廿日市工場のエネルギー設備についてさまざまな工夫を凝らしている。

一般的なLNG基地では、LNGの気化プロセスで海水を使用しているが、ここでは海水を控えている。なぜなら、廿日市工場は日本三景の一つで、世界遺産「厳島神社」を有する宮島の対岸に位置するからだ。周辺漁場などの海洋環境への配慮から海水は使わないという。

そこで気化向けに活用するのが、コージェネの排熱だ。ボイラーの予熱に使い熱交換器と組み合わせることで、基地全体の省エネにつなげている。基地の隣にある廿日市市の廃棄物処理施設とも連携し、同施設からの排熱を組み合わせ気化する。

また次頁でも触れるが、廿日市工場内で住友重機械工業が今後実証する液化空気エネルギー貯蔵システム向けにLNG冷熱を活用するなど、エリア一体で熱を余すことなく活用していく。まさに、コージェネを核とした設備運用のあくなき改善に余念がないといえそうだ。