【特集2】日立製作所と巧みな連携プレー実現 複数事業所のエネ共同利用を最適化

2024年7月3日

東京ガスエンジニアリングソリューションズ

隣接する複数の事業所が電力や熱エネルギーを効率良く活用する――。茨城県日立市でこうしたシステムを運用しているのが、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)と日立製作所だ。TGESが設置したコージェネレーションシステムなどのエネルギー設備を日立グループ3社4事業所が共同利用するという仕組みで、デジタル技術を駆使して高度に制御することも計画している。特定のエリア内で多彩なエネルギー資源を巧みに利用する先進事例として注目を集めそうだ。

日立製作所の大みか事業所


事業所単独で抱える課題 エネルギーサービスで解決

両社の事業は、複数の分散型電源を組み合わせたエネルギー供給網「マイクログリッド(小規模電力網)」を構築し、コージェネから発生する排熱利用システムを組み合わせる取り組みで、エネルギーの生産拠点と消費地の距離が近いことが特徴。送電ロスを最小限に抑えながら、排熱を生産プロセスで有効活用することで、効率的なエネルギー利用を実現している。

両社は今回、こうした分野でタッグを組み、昨年12月に日立グループの4事業所でマイクログリッド型エネルギー供給システムの運用を開始。一連の設備はTGESが保有し、エネルギーサービスとして運用する。

具体的には、TGESがコージェネ2基に加えて、冷水を作る吸収式冷凍機3基と蒸気を生み出すボイラー1基を設置。そこで生み出したエネルギーを、社会インフラを支える情報制御システムを手がける日立大みか事業所のほか、日立研究開発グループ茨城サイト(日立研究所臨海地区)、日立GEニュークリア・エナジー(日立事業所臨海工場内)、ミネベアパワーデバイス臨海工場(旧日立パワーデバイス臨海工場)にも届ける。

いずれの事業所も隣接しており、複数事業所で共同利用する一連の設備をエネルギーマネジメント事業者であるTGESが提供する。エネルギーの利用者が機器を所有・管理する必要がなくなることが、事業を成立させる上で重要なポイントの一つになったという。

日立は一連の環境を整えることで、事業所単独で解決が難しかったエネルギー運用の効率化という課題を解決し、エリア全体のエネルギーバランスを考慮しながら4事業所で電力と熱を利用できるようにした。

エネルギーを共同利用する4事業所は、クリーンルームの空調で使う化石燃料由来の熱エネルギー利用量を大幅に減らすという利点も得られる。4事業所からのCO2排出量の約15%に相当する年間約4500t(22年10月時点の試算値)が削減される見込みで、こうした活動を通じて脱炭素化に貢献したい考えだ。

運営面では、TGESが運営する遠隔監視センターから24 時間365日体制で一連のシステムを監視する体制を構築し、各種設備の安定稼働と最適運転を実現。エネルギー供給のレジリエンス(強靭性)を高めようと、コージェネに停電時に発電機を自立起動させる「BOS(ブラックアウトスタート)仕様」も取り入れた。

将来的には、デジタル技術を駆使して社会や事業の課題解決を支援する日立のソリューション「Lumada(ルマーダ)」も組み合わせて最適なエネルギー制御を追求。現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進していく。


関東圏の工場に展開 全体最適で脱炭素化へ

日立と日立パワーソリューションズは、昨年9月に関東圏に広がる日立グループの約20カ所の事業所をデジタルでつなぎ、複数拠点にまたがるエネルギー利用の全体最適を図る取り組みを開始した。

TGESと日立がタッグを組む背景には、脱炭素化という世界の潮流がある。TGESは「エネルギーを扱うプロ」として、各種機器を最適に制御して高効率に運用したりエネルギーの共同利用を実現したりするためのノウハウを蓄積し、CO2排出量を削減する課題に向き合ってきた。

コージェネの排熱も有効活用する

東京ガスグループは昨秋、脱炭素、最適化、レジリエンスという三つの価値を提供するソリューション事業ブランド「IGNITURE(イグニチャー)」を立ち上げた。今回の取り組みもその一環だ。

TGES産業エネルギー営業本部プロジェクト推進部で今回の事業のプロジェクトマネージャーを務める菅野均氏は、「複数の事業所をまとめてエネルギーを最適利用するモデルは幅広い業種に応用が可能。今後も全国での水平展開を目指したい」と意欲を示した。

一方で日立グループは30年度までに自社の事業活動で「カーボンニュートラル」を達成するという長期目標を掲げるとともに、GX(グリーントランスフォーメーション)を促進するソリューション事業を強化している。日立パワーソリューションズソリューション事業推進本部フロントエンジニアリング部の佐野賢治担当部長も「稼働データのモニタリングだけでなく、収集データの解析結果を運用の改善に役立てるなど、ビッグデータの高度利用も視野に入れていきたい」と力を込める。

分散型エネルギー社会の先頭を走る両社の挑戦からは、今後とも目が離せない。