AI活用しカラスの営巣防止 他の鳥害対策にも応用検討

2024年7月10日

【四国電力送配電】

従来取り組んできたカラスの営巣対策で、AI活用とLED点滅投光器が奏功した。

スマート保安の好例にもなり、今後の導入増加、他の鳥害対策への活用が期待されている。

四国電力送配電では、2022年春からカラスの営巣対策として、グループ会社テクノ・サクセスと共同開発した「AI型カラス忌避装置」「鳥害防止用LED点滅投光器」を使用し、成果を上げている。

変電所のカラスの営巣問題は設備の故障や停電につながるため、これまでもさまざまな対策を講じてきた。針金状や糸状の固定式の鳥害防止器具、においや粘着性のある忌避剤、定期的に発する音で逃避させる方法などを使用してきたが、カラスは鳥類の中でも学習能力が高く、また、慣れによる忌避効果の低下が課題になっており、改善が求められていた。

AIがカラスと判断し、LED閃光起動により逃避するカラス

生態調査から原型を開発 AIで識別、音と光で忌避

今回、カラス忌避装置を開発するにあたり、ある畜産場の協力を得て、そこに飛来するカラスの生態調査を行った。そこで判明したのは、カラスの忌避には金属打撃音と閃光の組み合わせが効果的ということだった。そこで、「AI型カラス忌避装置」「鳥害防止用LED点滅投光器」という2種類の製品のプロトタイプを制作した。この二つは次のように作動する。

変電所内の鉄構に飛来したカラスをカメラがとらえると、「AI型カラス忌避装置」を通じて、その画像に写っている生物がカラスかどうかを判断する。そして、AIがカラスだと判断した場合、鉄構に設置したスピーカーからカラスの嫌いな金属打撃音を発報。また、鉄構上の小型閃光器と地上の「鳥害防止用LED点滅投光器」が無線などで連動し、LEDの閃光をカラスに照射する仕組みだ。

「AI型カラス忌避装置」を開発するにあたり、コンセプトは三つあった。第一に、カラスが慣れてしまわないように、カラスが飛来した時だけ忌避装置が作動すること。第二に、同様に慣れを避けるために、忌避を促す音や光が変更可能なこと。第三に低コスト化が図れるように市販の既成品が活用可能なことだ。それゆえ、制御装置や防水スピーカー、閃光器などは市販されている小型の商品を採用し、低コスト化を実現した。

「鳥害防止用LED点滅投光器」は、変電所構内に飛来するカラスを地上からピンポイントで照らして忌避する装置として開発した。変電所には、カラスが巣を作ったとしても人間がそれを除去しに行くことが難しい危険な場所がある。そういった箇所への営巣を避けるために、指向性が高く高出力の閃光製品を検討し、カラスが嫌がる近紫外線(青色)を発する特殊仕様のLED点滅投光器(四国計測工業製)を採用した。また、カラスが飛来した場所に地上から投光できるように可搬式で、設置位置が容易に変更可能なものにした。

高所作業の負担激減 スマート保安の好例に

四国電力送配電はこれまでに、「AI型カラス忌避装置」を9台、「鳥害防止用LED点滅投光器」を8台導入し、カラスの営巣忌避に大きな成果を上げている。保守現場の評価は、「年間の営巣件数が大きく減少し、営巣防止効果が高い」「充電部に近い、高所で危険な箇所の営巣除去作業が激減して助かっている」「変電所の周辺環境への影響についても、音量調整や閃光方向、動作時間などを考慮して設定しているため問題は発生していない」など、二つの機器に対する満足度は非常に高い。

現在では、これらの機器の効果が証明され、複数の変電所にも導入を進めている。また、変電所にとって忌避すべきはカラスだけではない。そこで、今回の成果が他の鳥害にも活用できないか検討を始めている。一つ例を挙げると、サギの糞害がある。サギの糞は、長く粘着するという特性があり、落下する場所によっては変電所構内の電気事故につながる可能性があり、対策が待ち望まれている。

㊤変電所の鉄構に設置されたカメラ、スピーカー、小型閃光器 ㊦LED点滅投光器

四国電力送配電・送変電部・変電グループの澤村啓示郎氏は、「今回のカラス営巣忌避装置の開発は、別の見方をすれば、スマート保安を推進する中で生まれた一つの好例でもある」と強調する。

スマート保安とは、経済産業省が主宰する産業保安の維持や向上のために、IoTなどの先進技術を活用する取り組みのことで、20年6月に「スマート保安官民協議会」が発足。その所属部会の一つである電力安全部会が、21年4月、「電力保安分野 スマート保安に関するアクションプラン」を発表した。その中で、電気保安に関する現状の課題として、保安作業員の高齢化、人材不足、需要設備の高経年化などを挙げ、これらの課題を各種センサーや監視カメラなどを用いた監視・巡視の新技術導入により克服することを目指している。その新技術の中にはAIなどによるデータ解析も含まれている。

これまで、変電所には保安員が出向いて、メーターの読み取りや人の五感で外観や運転音に異常がないか確認する作業を行ってきたが、スマート保安の進展により時代は変わりつつある。スマート保安が電力の安定供給に果たす役割はさらに重要になってくるだろう。