【コラム/8月29日】暑い夏に考える~環境収容力と原子力、そして原子力規制如何

2024年8月29日

3、地球エコロジーの厳しさから

当然、地球エコロジーを考えると、従来の考えと違い、意外にもエネルギーの選択肢は少ない。太陽・地熱等自然エネルギー、核融合、原子力の選択肢しか残らない。いずれも経済的に利用可能な一定の技術水準を必要とする。技術エネルギーと言える。技術開発のみが、人類を支えるエネルギー供給に寄与する術でもある。果たして現人類を支えるようなエネルギー供給を現世代が技術開発で確保可能であろうか。現政府のエネルギー選択、選択基準、エネルギー技術開発への取り組みやその体制が適切か冷徹に見分すべきである。 

地球エコロジー維持に必要な温室効果ガス削減は、極めて厳しい選択を人類に突きつけている。昨今の経済学や政策は、温室効果ガス削減を、大気の商品化を意味する価格や規制の活用で、市場の解決策を見出そうとする傾向にある。果たして効果はどうか。いずれにしても地球エコロジーの変容は、生活・ビジネスの世界に制約・規制を強めざるを得ない。

密度は紛争の一要因

現在の国際紛争をみると、過去(19世紀初頭)のマルサスやラマルクの指摘が錯綜している。マルサスは「人口は、制限されなければ、等比数列的に増大する。生活資料は、等差数列的にしか増大しない」(「人口論」(初版:匿名1798、第二版1803中央公論社1969年)と指摘した。この難題を、人類は化石エネルギーの活用で克服してきた。

進化論者・動物哲学のラマルクは述べる。長文ながら引用する。「最後にただ人間だけは、彼に特有な総べてのことを切り離して考えると、その知能と手段とはどんな動物の食欲によっても繁殖が停止されないよう自己を保護しているので無限に繁殖できるように見える。人間は、それらの動物に対し優越性を行使して、最も大きいまた最も強い動物類を恐れる代わりに、却ってそれらの動物を掃滅でき、そして日々にそれら動物の個体の数を制限しているのである・・しかし、自然は数多くの激情を授け、これは不幸にも知能と共に発達して、この種の個体の極度の繁殖に一つの大きな障害を置いている。実際、人間はその同胞の数を絶えず減らす役目を自ら引き受けているように思われるのであって、私は何時の日になっても地球はその養いうる限度の人口を以て覆われることはないであろうと断言することを憚らない」(ラマルク「動物哲学(1809年)」岩波書店1954年)。

現世の人々の動きは、19世紀帝国主義時代の姿(紛争や戦争)を彷彿とさせる。ロシアの欲望むき出しの侵略、イスラエル・パレスチナの生存を賭けた争いに顔をこわばらせる。


4、現在の検討は妥当か

現在エネルギー需給面で、総合エネルギー調査会基本政策分科会で第7次エネルギー基本計画(前回21年10月策定)の24年改定を審議中である。国際エネ情勢の不安定(戦争・地政学リスク)、カーボンニュートラル(CN)・脱炭素という困難な課題に挑戦している。当初の検討課題は、① 需要側のGX・省エネ、② 電源の脱炭素化(再エネ、原子力、水素・アンモニア・CCSによる火力の脱炭素化等)、系統整備・蓄電池、③ 重要鉱物、脱炭素燃料を含む資源戦略、④ 電力システム改革/エネルギー事業環境整備、⑤ エネルギーミックスの在り⽅ 等を挙げた。グリーントランスフォーメーション(GX)提案の各施策実現で、エネ供給確保、経済安定・成長、安全保障確保を狙う。

各業界のヒアリングを実施した。脱炭素電源について(第58回7月8日)、安定供給の現状と課題と火力の脱炭素化の在り方について(第59回同23日)、ヒアリング等参加団体の説明聴取(第60回8月2日)等である。聞き取り内容は、第6次以降のエネ・GX状況変化の見解、2040年エネミックス(S+3E)のバランスと将来像、企業活動・国民生活への影響と課題、GX政策とエネルギー政策⼀体的推進上の重点、脱炭素電源の拡大活用の課題・需給両面で必要な政策等である。

今回の基本計画は、CNの実現性を問う。AI等で電力需要拡大を見込む中で、如何に省エネし、再エネを拡大し、原子力の再稼働・新増設を進めるか。そして化石燃料の使用を縮減するか。技術開発・実用化の状況を見ながら、市場経済に取り組む術を明確に出来るか。また立地問題の対応が十分で、設備投資が狙い通り進むか。その主体は、民間企業任せで十分か。そして需給に絡む利害関係者の調整が、円満に可能か。CNの実現を、これらの具体化に賭けている。担当官庁の実務としては理解できる。

政府・国民全体ではどうか。今問われていることは、大上段に振りかざすわけでないが、環境収容力の視点で見た人類の生存数と必要エネルギー確保であろう。

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