【コラム/8月29日】暑い夏に考える~環境収容力と原子力、そして原子力規制如何

2024年8月29日

5、地球生態系の視点で見れば

人口規模と経済水準の議論は避けられない

エネルギー選択を考える場合、地球生態系を踏まえた人類の環境収容力を再吟味する必要がある。第一に地球環境生態系の現状から見た人類の数・活動規模の議論が必要である。人口規模と経済水準の問題である。その上で我国の対応を検討することが必要である。この視点では現下の人口減少問題や経済成長等の評価が変わる可能性がある。 

地球エコロジーの視点から都市計画の再構築が必要

第二に人類の環境収容力を拡大させる都市・都市活動のあり方(経済とエネ消費の水準)を再考する必要がある。多くの都市は、自然発生的に形成されてきた。そして対症療法の都市計画・改善もあった。ただ地球生態系の視点は、皆無であった。所謂「都市生態学」の視点は、都市住人の視点である。地球生態系や地球環境問題と焦点が一致していない。必要なことは、都市とエネルギー消費の最小化である。その実現を図る都市の将来の姿(都市計画)が必要あろう。住まい方と移動の吟味でもある。

エネ視点で国土開発・利用計画が必要

第三に当然なことは、地球エコロジーからみたエネルギー選択肢の確認である。再エネには、東日本大震災以降、多大な負担を求めつつ注力して来た。現在は、制約(立地問題等)の克服が課題である。これは都市計画、大きく見れば国土開発・利用計画のあり方となる。再エネ活用30年経過だが、国土庁・経企庁亡き後、政治・行政の手配が不行き届きの状態が継続している。消滅都市が話題となるが、狭い国土故、エネルギー利用計画上は、国土利用の有効活用に広がりを与える可能性をもつ。

エネ問題で原子力開発と規制の再構築が必要

そして現実エネルギーとしての原子力利用の拡大である。経済的課題もあるが、政治的、行政的、規制的問題が立ちはだかっている。政治的には、科学的精神の尊重と社会的受容につきる。地球エコロジー・密度効果等を念頭に置いた意見集約が期待される。

行政的には責任の所在の明確化である。推進官庁としてエネ庁を明確に指定し規制も含めて、行政間の調整権限を賦与することが必要である。

規制委員会は、サイレントキラー?

原子力規制の理念は、国民安全最優先・安全管理・安全文化、使命は規制を通じて人と環境を守るとする。多くの人に異見はないであろう。原子力活用必須を考慮する者から、委員会発足後10数年経た今日の許認可状況を見ると疑問が浮かぶ。近時の議事録(原電敦賀審議)を拝見すると、曖昧模糊の意見交換の印象を受ける。地下のこと故、多くは分からず経験頼りであろう。ただ適切なアドバイスもなく、対話と称して意見交換しているだけでないか。過去の役所仕事を思い出す。民間事業者と規制庁の議論は、日本的お上・庶民の印象を拭えない。矢面ありの官僚体質は難儀である。

使命に人と環境の言葉もあるが、地球エコロジー・環境収容力という視点は見えない。事業に掛ける原子力発電事業者の見方にも一理はある。専門家と官僚構成の規制委員会のあり方見直しが必要であろう。

基本計画で必要な提言とは

故に基本計画は、人口と経済水準、国土開発利用・都市のあり方、原子力推進官庁の指定、原子力規制委員会のあり方(人選・組織体制の変更)について明確な提言を行うべきである。

政治・行政・規制サイドが、サイレントキラーにならないことを期待したい。


【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

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