【関西電力 森社長】最新知見を取り込み安全・信頼性を高め 原子力を活用していく

2024年9月1日

志賀 原子力を軸に、ゼロカーボン化が相当進みそうですね。

 原子力7基体制の確立や国内外のゼロカーボン電源への投資など、「ゼロカーボンロードマップ」に基づき着実に進捗しています。ロードマップに掲げる「25年度に発電によるCO2排出量を13年度比半減する」目標については、2年前倒しで達成することができました。アップデートした中計では、7基の安全・安定運転の継続と運用の高度化を通じて原子力利用率の向上に取り組むとともに、将来のリプレースを見据えた事業環境整備や原子燃料サイクルの推進に注力していくことを明確に打ち出しました。

志賀 火力のゼロカーボン化の取り組み状況は。

 ゼロカーボンロードマップを念頭に、ゼロカーボン燃料の活用やCCUS(CO2の回収・貯留・利用)技術の導入などの検討を進めているところです。

具体的には、南港発電所を発電効率の高いコンバインドサイクル方式を採用した最新設備へと更新することを決めました。将来的には、CCS(CO2の回収・貯留)または水素専焼によりゼロカーボン化を目指す方針で、30年代後半からCCS付き運転または水素混焼運転の開始を視野に入れています。

国内外の石炭火力については、当該国の政策に適合し、かつゼロカーボン化に貢献できる設備を除き、今後新規計画を行わないことを決めています。既設石炭火力については、国の政策動向を踏まえて、適切に対応していきます。

志賀 原子力で水素を製造し、それをLNG火力に混焼することで火力の排出量を引き下げるという道も描けそうです。

 国としてどのような電源構成を構築するかは、今まさに議論されている第7次エネルギー基本計画の中で示していただく必要があります。もし、産業界全体で電力需要が伸びていくのであれば、原子力はCO2を排出しないクリーンな電気として使っていただくのが最も効率的です。一方で、水素変換した方がメリットのある利用分野もありますので、原子力水素を製造し供給することもあり得ると思います。それを踏まえて、原子力発電所をどれだけ建設するべきか、国としての案を示していただかなければなりません。

志賀 再エネの開発目標に対する進捗についてはいかがでしょうか。 森 運転開始前も含めると、国内の再エネ設備容量は今年の5月時点で約412・5万kWと、40年までに累計開発900万kW規模という目標に対し着実に進捗し手ごたえを感じています。6月11日には、グループ会社の関電プラントが参画する浮体式洋上風力の実証事業がグリーンイノベーション(GI)基金事業に採択されました。引き続き洋上風力を中心に、他社とのアライアンスを通じて競争力を強化するなど、新規開発を加速させたいと考えています。


姫路に水素インフラ 実現可能性を探る

志賀 姫路エリアを起点に水素サプライチェーンの構築を目指しています。なぜ姫路なのでしょうか。

 姫路エリアには、水素利用に意欲を示す事業者が複数存在しています。また、当社が将来的な水素受入・貯蔵拠点について同エリアを視野に入れていること、貨物列車による水素輸送の拠点として活用が期待できる貨物駅があることなどから、JR西日本、JR貨物、NTTアノードエナジー、NTT、パナソニックの5社と共同で、同地区を起点としたグリーン水素の大規模輸送・利活用に向けた調査を開始することになりました。6社それぞれの強みを生かし、各社のインフラを最大限活用することで水素輸送の低コスト化などにつなげ、安価で効率的な国内水素サプライチェーンの実現に貢献できると考えています。現時点では、具体的な水素受入拠点が決まっているわけではありませんが、30年代の社会実装を目指し、24年度から25年度に実現可能性調査(FS)を実施し、その結果を踏まえて実証に進めていきます。

志賀 電源の脱炭素戦略(EX)についてうかがってきましたが、VX、BXについても具体的な取り組みをお聞かせください。

 VXについては、DC事業や分散型サービスプラットフォーム事業など、将来の収益源となりうる事業を創出してきました。今後は、脱炭素電源を組み合わせたゼロカーボンソリューションなどを手掛け、全国でお客さまの排出量削減に貢献するほか、モビリティ事業におけるEV充電やエネルギーマネジメントシステムを中心としたパッケージサービスを提供していく方針です。 BXについては、前半3カ年は、特に財務体質の健全化に向けコスト構造改革などに注力してきました。イノベーション推進本部の立ち上げに加え、K4Venturesを通じたベンチャー投資などにより、グループ大のオープンイノベーションを加速。デジタル技術の活用では、K4Digitalにより、新規事業へのデジタル技術適用の支援を推進しています。

姫路エリアを起点に水素サプライチェーンの構築を目指す

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