海外で脱炭素の戦略的投資拡大 ドイツ・ベトナム両事業の最新事情

2024年9月6日

【中部電力】

中部電力は2021年度から30年度で4000億円投資し脱炭素化につながる事業を拡大する。

国内エネルギー事業と成長分野に位置付けるグローバル事業で利益ポートフォリオ1対1を目指す。

中部電力は、グローバル事業において、脱炭素につながる事業への戦略的投資を拡大し、欧州・アジアを中心とした脱炭素エネルギー企業を目指している。今回は、ベトナムにおける電気事業の橋頭堡と位置付ける再エネ会社、エネルギー業界のゲームチェンジャーと期待される地熱利用技術を用いたドイツで展開中のプロジェクトの二つを紹介する。

ベトナムのNho Que1水力発電所(3万24kW)


発電所の点検記録を整備 日越のDX技術交流に期待

ベトナムで出資するのは水力事業に取り組むビテクスコパワー社(ビテクスコ社)。同国最大規模の民間再エネ発電事業会社であり、ベトナム国内で29カ所の水力発電所と2カ所の太陽光発電所を運営・管理している。

海外の水力発電事業に初出資する理由は大きく三つある。第一に、ベトナムは人口増加と経済発展が著しく、今後も電力需要の拡大が期待できること。第二に、ASEAN諸国の中でも日射量や風況が良好なため、再エネ開発のポテンシャルが高いこと。第三に、ベトナム政府が再エネ比率を高めていく計画を打ち出すなど、再エネ分野の一層の成長が期待できるためだ。

中部電力は、設立以来70年以上にわたって培ってきた水力発電所の運転・保守に関する技術や知見を活用し、ビテクスコ社の水力発電所の運転効率化や安全性向上に貢献している。これにより、水力発電事業による安定収益を基盤にして、ベトナムの再エネ開発を推進し、ベトナムの成長性を取り込んでいく計画だ。

ビテクスコ社に運用保守エキスパートとして出向中の石原真輔副長は、中部電力の水力技術者として長いキャリアを有し、現在特に力を入れているのが、保守業務の基本となる点検記録の管理だ。

ビテクスコ社では、水力発電所の点検は行われてはいたものの、その記録を残し、将来の維持管理に役立てるという視点が十分ではなかった。そこで石原副長は、日本の水力発電所で活用してきた点検ノートを取り入れた。本来点検とはその場限りのものではなく、データを蓄積し、整理し、それらを活用することで、発電所のオーバーホールまでの時間を延ばし、維持コスト削減につながるものだということを発電所の技術者に伝えている。

言葉の壁も大きく立ちはだかる中、どうしたら理念を共有できるのか。石原副長は、粘り強くコミュニケーションを続けることが肝要だと考えている。

今後期待を寄せているのがベトナムと日本の技術交流だ。ビテクスコ社の水力発電所は一番古いものでも2009年式。したがって、どの発電所の機器も比較的新しいためデジタル化を進めやすく、これからDXが本格化する日本にとっては、ベトナムの技術が参考になることもあり得る。その点で、ベトナム人技術者、日本人技術者のお互いの研鑽が、国境を越えて、発電所の運転や保守のクオリティ向上につながるのではないかと期待している。

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