【コラム/9月26日】原子力活用と規制基準を考える~衰亡型か活用型か

2024年9月26日

飯倉 穣/エコノミスト

1、食い違う見方

日本のエネ事情・温暖化対策は、自民党総裁選、立憲民主党党首選で、原子力への態度を問いかけている。原子力発電再稼働・開発について候補者の否定的見方、消極的発言、仕方ない、差し当たりという反応がある。

岸田首相は、原子力発電所について「安全性の確保を大前提としつつ、地元理解を得た上で再稼働していく、というのが政府の一貫した方針です」 (第12回原子力関係閣僚会議発言:24年9月6日)と述べた。

政府が再稼働に踏み込む中で、実務面の動きは鈍い。10数年間地盤の議論が続いている。敦賀原発は、原子力規制員会が、浦底断層(活断層)近くの「K断層は、後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できない」と判断した。報道もあった。「敦賀2号機初の不合格 規制委、再稼働認めず 原電は再申請の意向」(日経24年8月29日)「規制委 敦賀2号機「不適合」了承 一般から意見募集」(朝日同)。

規制委は、事業者の調査結果(活断層否定)について、地盤の動きはわからない、証明できないと記した。再び事業者主張と異なる判断となった。敦賀2号機は再稼働を認められないばかりでなく、原子力発電所の存続可能性を低下させる。 同発電所の立地経緯と運転実績から見れば、敷地内の破砕帯について浦底断層の影響をある程度受けるとしても、耐震工学的な対応も含めて安全性確保が可能とも思える。現状の原子力規制、専門家集団原子力規制委員会の在り方・規制基準を、地質非専門者の目で経済・エネルギー・環境問題から考えてみたい。


2、原子力規制委員会は

委員に強権賦与

原子力規制委員会は、一般人には分かりにくい。根拠法は「原子力規制委員会設置法(議員立法)」(12年6月20日成立・27日公布)である。規制の一元化を行うため、内閣府原子力安全員会・経産省原子力保安院を分離し、環境省の外部部局且つ独立性の高い3条委員会とした。人選の経緯・適任性は定かでないが、“専門家”委員長・委員任命で原子力規制委員会発足(9月19日)となる。委員は政治的に独立し強い権限を持つ。事務局として原子力規制庁がある。発電用原子炉の新規制制定に取り組み、13年7月原子力発電規制基準が作られた。新原子力規制は、東日本大震災・福島第一原発事故を反省し、規制の強化を行い、且つバックフィット制度(新基準の既設備への適合義務付け)を採用した。

追込み向け規制強化一筋?

実用発電用原子炉(原子力発電所)に係る規制基準の考え方は次の通りである。まず見直しの基本的考え方がある。従来の規制基準の前提である自然現象に対する考慮、 火災に対する考慮、電源の信頼性、その他の設備の性能、耐震・耐津波性能の更なる強化・新設である。加えてテロ対策で意図的な航空機衝突への対応、シビアアクシデント対策で放射性物質の拡散抑制対策、格納容器破損防止対策、炉心損傷防止対策 (複数の機器の故障を想定)を新設した。具体例では、火山等の想定の引上げと防護対策、電源喪失対策で独立外部電源2回線、非常用電源3台・電源車2台、所内直流電源容量増等々を求めた。

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