【四国電力 宮本社長】電気事業の安定運営と成長事業の拡大により地域の発展に貢献

2024年10月1日

アンモニアで共同検討 伊方30年超運転を着実に

志賀 カーボンニュートラルに向けては石炭火力への対応も重要です。既に西条1号機のリプレースなどの手も打っています。

宮本 脱炭素社会の実現に向けて、西条1号機のように効率の良い新しい設備に置き換えることや、水素やアンモニアなど燃料側の非化石化を進めていく必要があります。アンモニア関連では、愛媛県今治市にある三菱商事の波方ターミナルにおいて、現状のLPG基地をアンモニア基地に転換する検討を共同で進めています。そのアンモニアは、波方から距離の近い西条発電所で活用することを視野に入れています。

志賀 他方で火力の役割も重要です。長期脱炭素電源オークションなどを活用した新増設をどう考えていますか。

宮本 自然変動が不可避の再エネの導入拡大には、やはり火力の調整力が必要です。高性能で安価な蓄電池が登場すれば別ですが、現時点ではCCS(CO2回収・貯留)も含めて、低炭素化した燃料で火力発電を活用していくことが必要となります。そのためには長期脱炭素電源オークションを使った火力の新増設についても、選択肢の一つとして検討する必要があると考えています。

志賀 脱炭素電源の本命の原子力についてはどうでしょうか。

宮本 現在、伊方3号機は30年超運転に向けて、国の審査を受けているところです。着実にこの対応を進めるとともに、引き続き安全・安定運転を積み重ねて、地域の皆さまから信頼される発電所を目指してまいります。また、原子力には人材確保や技術継承などの課題もありますが、その具体策を考える上でも、やはり伊方3号機の安全な運転に努め、新しい規制基準や知見を反映させ、より安全な設備にしていくことが第一です。さらに1、2号機の廃炉にもしっかりと取り組んでまいります。

志賀 最後に、エネルギー基本計画などの検討が進む中、政策への意見をお聞かせください。

宮本 政府が原子力の重要性を踏まえ政策を前進させたことは非常にありがたく思っています。今回のエネルギー基本計画の中でも、原子力の必要性をしっかり位置付けていただき、われわれ事業者もそれに沿って対応を進めてまいります。

また、50年カーボンニュートラル実現に向けて、エネルギー安全保障の強化とGX(グリーントランスフォーメーション)実現の同時達成に向けた道筋を明確に示していただくことも重要です。加えて、電力需要が中長期的に大きく伸びる可能性があることなども考慮しながら、必要な供給力の確保や電源構成について考える必要があります。

当社としても、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立に向けて、伊方発電所を最大限活用していくことに加え、再エネの主力電源化に向けてあらゆる対策を講じていきたいと考えています。また、火力電源については、経済性も考慮しながら、今後、脱炭素化を進める方針であり、国には、水素・アンモニア混焼などの革新的技術の開発・導入を促す支援についてもしっかり検討していただきたいと思います。

志賀 新社長の手腕とこれからの展開に期待しています。本日はありがとうございました。


対談を終えて

企画部長時代に策定に関わった中期経営計画では、電気事業とそれ以外を車の両輪と位置付けた。電気事業以外の展開は実に多彩。また、電気事業では、伊方3号機の安全・安定運転に加え、電源の低・脱炭素化への取り組みを着実に推し進める。現場と企画を歩んだ積み重ねから来る安定感を軸に、トップとして挑戦し続ける企業集団を目指す意識が伝わってくる。(本誌・志賀正利)

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