【北海道電力 齋藤社長】北海道をCN拠点へ 脱炭素技術を社会実装 GXビジョンを実現する

2024年12月1日

四つのテーマで改善 泊3号の審査を効率化

井関 泊発電所の現在の審査状況はいかがですか。

齋藤 泊発電所の新規制基準適合性審査について、主に地震や津波、火山といった自然ハザード分野における対応について時間を要していましたが、効率的に審査を進めるため、「論点抽出の徹底」「審査体制の補強」「地震や津波などの自然ハザード分野のリソースの確保」「コミュニケーションの充実」の四つのテーマで改善を図っています。最新知見の反映が一部残されているものの、主要な審査項目である「基準地震動」「基準津波」「火山影響評価」について、原子力規制委員会から「概ね妥当な検討がなされている」との評価を得ることができたほか、残る審査項目も少なくなってきており、審査は大詰めを迎えていると考えています。

設置変更許可に係る一通りの説明完了時期として12月下旬を目指しており、引き続き審査対応に総力を挙げて取り組みます。それ以降の設工認審査、使用前事業者検査などについても計画的に対応を進めるとともに、新たな防潮堤設置工事をはじめとする安全対策工事を早期に完了させ、泊発電所の早期再稼働を目指します。

資源に乏しいわが国の実情を踏まえると、エネルギー安定供給の確保、経済効率性、環境適合のバランスに優れる原子力発電が果たす役割は大きく、北海道においても、泊発電所は必要不可欠な電源だと考えています。泊1・2号機についても、3号機に引き続き可能な限り迅速に審査が進められるよう対応し、再稼働後の安全・安定的な運転を見据えた要員確保や人材の育成にも努めていきます。

井関 泊発電所の安全対策工事などに充てるため、10月に総額600億円のトランジションボンドを発行しました。

齋藤 カーボンニュートラル(CN)に資する原子力発電所の安全対策の一環として防潮堤の建設に充てるという使途を明確にし、それにご理解いただけたことは大変励みになりました。新たな防潮堤の設置工事は、再稼働へのクリティカルパスです。現状、考え得る工期短縮策を織り込み3年程度での完成を目標としていますが、施工会社と一体となり、さらなる工期短縮を達成するための検討を実施中です。具体的には、防潮堤の材料となるコンクリートやセメント改良土の製造設備増設に向けた準備を進めています。その他、冬期間の施工や作業員の増員などについても検討しています。 資金調達に関しては抜本的な業務効率化や業務変革を目指したカイゼン活動、DX(デジタル・トランスフォーメーション)および、資機材調達コストの低減などにより自己資金を確保するとともに、会社が成長していく姿を社債投資家や金融機関へ丁寧に説明し、脱炭素電源である泊発電所の再稼働に必要な安全対策を資金使途とするトランジション・ファイナンスの活用などあらゆる手段を講じて外部資金を確保していきます。


円滑な資金調達へ 利益目標を引き上げ

井関 今年度の業績見通しはいかがでしょうか。今後、目指していく利益水準はどのように考えていますか。

齋藤 今年度通期の経常利益は370億円程度の見通しとなっています。燃料費等調整制度の期ずれ影響などの一過性の要因を除くと、360億円程度の利益水準になると考えています。当社は、CNの要請の高まりに加え、次世代半導体工場や大型DCの進出による中長期的な道内電力需要の増加など経営環境の変化を的確に捉え、新たな事業ポートフォリオを実現することで収益基盤の拡大を目指しています。

そのためには企業価値の向上と円滑な資金調達を行っていくことが不可欠であり、利益水準のさらなる引き上げが必要となります。今後の経営環境の変化やグループの成長を見据え、「ほくでんグループ経営ビジョン2030(20年4月策定)」を見直していく中で、各事業の市場におけるポジショニングを踏まえた事業ポートフォリオマネジメントを深化させていきます。利益目標などの経営目標は、今年度中を目途にお示ししたいと考えています。


半導体関連産業の進出 知見や技術でサポート

井関 苫小牧エリアを中心に、火力燃料の脱炭素化の取り組みを進めています。

齋藤 火力発電は、重要な供給力であるとともに、再エネの変動を補う調整力として重要な役割を担っていることから、50年CNの実現に向けて、電力の安定供給を前提としつつ、火力発電の脱炭素化へのシフトが必要不可欠です。このため、当社は水素・アンモニアへの燃料転換やCCUS(CO2の回収・貯留・利用)などを活用した火力発電の脱炭素化について、国の支援事業も活用しながら社会実装に向けた取り組みを強く推し進めています。

苫小牧エリアは、当社最大の火力発電所である苫東厚真発電所が位置し、多様な産業が集積していること、国のCCS(CO2の回収・貯留)実証試験が行われるなどCNへの取り組みが先行している地域であること、さらには、港湾があり、新千歳空港が近く高速道路も整備されているなど交通アクセスにも優れていることから、当社のCN拠点になると考えています。北海道はCN実現に向けた先進的なモデル地域となる可能性が十分にあると考えており、ぜひ、国が整備を進めているCN拠点の一つとして位置付けていただきたいですね。

井関 北海道の豊富な再エネ資源を生かした産業誘致が期待されています。地域の経済活性化をどう後押ししていきますか。

齋藤 次世代半導体の国産化を目指すという重要な国家プロジェクトの進出は、周辺地域への関連産業の集積、さらには雇用や産学官連携など幅広い分野への波及が期待されており、実際に各社より進出計画などを公表する動きが出てきています。当社は、ラピダス社の進出を契機に、新たに北海道に進出するお客さまに対してエネルギーソリューションの提案などを行うために専任組織を設置し、その計画が円滑に進むようサポートしています。今後も、これまで培ってきた省エネルギーサービスの知見や技術などを最大限活用しつつ、各自治体や経済団体などと連携しながら、グループ一丸となり、本プロジェクトの成功と関連産業の進出、また、DC集積に向けてスピード感を持って取り組んでいきます。


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