【西部ガスホールディングス 加藤社長】経営合理性の追求とESG経営の徹底を両立 組織の価値観を変える
大型インフラ投資決断 低炭素需要を獲得
志賀 その意味でも、先般、タンク増設を決めたひびきLNG基地(北九州市)の戦略的な位置付けは非常に大きい。
加藤 長期収支が成り立たないようであれば、見合わすことも一つの選択肢でしたが、新たな成長投資としてひびきLNG基地に3号タンク(23万㎘)を増設することを経営判断として決定しました。この大型インフラ投資が実現することで、燃料転換による国内の低炭素需要を確実に獲得していくことができますし、その暁には海外のエネルギー事業拡大にも再チャレンジできると考えています。企業は、投資をしなければ成長しませんし利益を獲得できません。ゆえに「投資なくして利益なし」なのです。当社のガスエネルギー事業は、正念場にあります。低炭素化の取り組みなくして脱炭素化を実現できるわけではなく、石炭燃転にかける思いには並々ならぬものがあります。都市ガスインフラは、短くとも25年以上は座礁資産にはならないとの確信もあります。
経営にとって最大のリスクはオミッションバイアスにはまってしまうことであり、リスクを恐れて何もしないという判断をしてしまうことです。事業という全ての企画、実践は、常に一体化させなければなりませんが、そこには無数のリスクが伴います。あるべき姿を描きつつ、現実的にはどういう時間軸でどういう方策で埋めて行くかを考えなければ、4000人近いグループ社員の生活を維持していくことはできません。パラダイムシフトまでには、相応の時間がかかるわけですから。
志賀 電力事業についてはいかがですか。
加藤 電力事業においては現在、グループ初の自社電源として「ひびき発電所」を建設中で、26年3月に運開予定です。安定的かつ安価な電源調達を実現し、高圧・特別高圧や、卸販売の強化、新料金や新サービスなど小売事業強化につなげます。容量拠出金の影響で電力収支は厳しい状況ですが、同発電所の運開以降は収益が拡大する見込みです。さらなるお客さまの獲得やコスト削減を図り、収益性の確保に努めていきます。
志賀 脱炭素化に向け再生可能エネルギーに注力しています。
加藤 24年度に7万5000kW、30年度には20万kWの再エネ電源取扱量目標を掲げており、今後も継続的に拡大していく方針です。これまで開発してきた太陽光発電、陸上・洋上風力発電に加え、地熱発電やバイオマス発電、小水力発電などの多様な電源開発を進めるとともに、非FITやオフサイトPPA(電力購入契約)の検討・推進、「燃料電池+太陽光発電」を基本に
「蓄電池」も加えていくなど、新たなサービスの創出やビジネスモデルの構築に取り組んでいきます。24年3月に地熱発電、7月にバイオマス発電に初めて出資したことは、当社として画期的でした。住民の方が嫌がる場所で商売してもうまくいきません。今後も地熱発電・バイオマス発電などのプロジェクトに積極的に取り組んでいきます。