統合的なトランジションの推進提言へ 産学協創フォーラムを開催
【日立東大ラボ】
東京大学と日立製作所による「日立東大ラボ」は1月10日、カーボンニュートラル(CN)社会へのエネルギー転換について意見を交わす産学協創フォーラム「Society5.0 を支えるエネルギーシステムの実現に向けて」を開催した。

同ラボは2018年以降毎年度、電力システムを巡る提言書を発刊、これまで第6版まで重ねてきた。そして今春には、日本を取り巻く情勢変化を反映した、CNにとどまらない、社会・地域・産業を包括的にとらえた「統合的トランジション」の推進を提言として盛り込んだ第7版の発刊を予定している。
提言書の概要について解説した日立の楠見尚弘・研究開発グループサステナビリティ研究統括本部長は、「イノベーションが実装できなければ、40年に1・4兆~2・2兆円のエネルギーコスト増が見込まれる」との危機感を強調。技術イノベーションを起こし社会実装することの重要性に加え、CNだけでなく生物多様性や地方創生、防災など他の社会課題との統合的なトランジションを進めるべく、社会システムの転換を促す政策づくりの必要性を訴えた。
脱炭素電源投資促せるか 官民の役割で意見を交わす
その後、「グリーン変革の新たなフェーズにおける日本」「エネルギートランジション~デジタル活用で創る発展的カーボンニュートラル社会」と題した二つのパネルディスカッションが行われ、学識者や有識者、資源エネルギー庁関係者が登壇した。
「エネルギートランジション」のセッションではエネ庁の筑紫正宏・エネ庁電力基盤整備課長が、CN社会を支える脱炭素電源投資の在り方に触れ、「PPA(電力販売契約)などを通じて長期で取引されることが大事。それでも取り切れないリスクを制度でどう手当てするかが課題だ」と述べた。これに対し東大の大橋弘副学長は、「電源の社会的な意義が変わると事業者が困る。政策当局が長期でスタンスを変えないことが重要であり、その上での採算性の話だ」と注文を付けた。
産業GXに向けたエネルギーシステムの構築に言及した日立の山田竜也・エネルギー営業統括本部営業企画・国際本部担当本部長は、「需要家の脱炭素電源ニーズが高まっている。発電・送配電・産業集積の統合計画を策定し予見性を高めることが必要」との認識を示した。