【日本原子力発電 村松社長】原子力の最大限活用エネ基でついに明示 具体化に役割発揮へ
原子力の最大限活用に向けた方針が、第7次エネ基に盛り込まれた。
具体化される政策と歩調を合わせ将来ビジョン実現に貢献しつつ、一歩ずつ足元の課題解決に努める。
【インタビュー:村松 衛/日本原子力発電社長】

志賀 さまざまな議論を経て2月18日に閣議決定された第7次エネルギー基本計画を見ると、原子力についての評価が大きく変わりました。多くの関係者からほぼ満点の内容ではないかといった受け止めが出ているようです。まずは率直な評価をお聞きしたい。
村松 第7次エネルギー基本計画では、原子力事業者にとってありがたい内容が示されました。一つは、「原子力への依存度を可能な限り低減する」という一文が消え、積極的に活用する方針へ明確に転換されたことです。二つ目は次世代原子炉へのリプレースの定義が、「廃炉を決定した原発の敷地内」から「廃炉を決定した事業者のサイト内」へと修正されました。この意義は大きい。
当社は既に敦賀発電所1号機と東海発電所の廃止措置を進めており、敦賀3・4号機の計画そのものが今回のエネ基に沿った内容といえます。
革新炉へのリプレース 急がれる政策の具体化
志賀 具体的に展開していく上ではどんな課題がありますか。
村松 最大のポイントは、革新軽水炉をどういう性能にするのか、ということです。この内容について、原子力規制委員会とATENA(原子力エネルギー協議会)主導の民間で検討を進めています。敦賀3・4号機はAPWR(改良型加圧水型軽水炉)の計画ですが、山中伸介委員長からは、「今のままで新規制基準に適合する内容というだけでは革新軽水炉としては不十分で、それ以上の性能を組み込むように」といった考えが示されています。
現在、議論のベースとなっているのは三菱重工業が提案する「SRZ―1200」で、従前のAPWRとの大きな違いとして、福島第一の事故を踏まえてデブリ(溶融燃料)を原子炉格納容器内で保持・冷却するコアキャッチャーを装備することがあります。こうした要求性能を踏まえる必要があり、まず一連の議論を見極めていきます。

志賀 現時点で明言は難しいでしょうが、コストはどの程度の水準になりそうでしょうか。
村松 まだ分かりませんが、欧州で建設中のEPR(欧州加圧水型炉)、あるいは米国のAP1000などは1兆円規模となっています。厳しい基準に耐える仕様となれば、コストが高くなるのはやむを得ません。
志賀 経営的なリスク、特に資金調達や推進体制の在り方などが課題になるかと思いますが、具体的な議論はこれからです。どんな方向性を期待しますか。
村松 既に、投資回収のリスクを低減する仕組みとして長期脱炭素電源オークションがあります。ただ、いざリプレースをしていく段階での支援措置としては、これだけでは不十分です。政府はエネ基で示した方針の実現に向け、GX(グリーントランスフォーメーション)2040ビジョンで示されたように、大胆な設備投資などの実践に向けた事業環境整備を進めていくものと思います。
例えば、英国のCfD(差額決済契約)が参考になるのではないでしょうか。建設審査と実際の建設の期間が長期化する中でリスクが拡大することを踏まえ、投資の予見性を確保する仕組みです。今後日本でどのような制度が検討されていくのか、注目していきます。2030年あるいは50年のビジョンに向けた措置となりますが、時間はそれほどありません。早急に議論を進め、来年の通常国会あたりで必要な法整備などが行われることを期待しています。