淀川にガスセンサー工場を新設 製造拠点の分散化で有事に対応
【新コスモス電機】
「世界中のガス事故をなくす」という思いを胸に、半世紀以上にわたってガスセンサーの開発・製造を行ってきた新コスモス電機は1月、大阪市淀川区の本社エリアに、新たなガスセンサー工場となる「淀川工場」を設立した。
同工場は主に、同社製電池式ガス警報器の基盤である「MEMS(微小電子機械システム)センサ」の製造を担当。本格的に稼働が始まれば、ガスセンサーの製造能力は現行の2倍にまで高まる見込みだ。

これまで、MEMSをはじめとしたガスセンサーの製造は、兵庫県三木市の「コスモスセンサセンター」(CSC)で一貫して行われてきた。CSCが稼働した2014年当初は、問題がないように思われた一拠点体制だが、近年のガス警報器の受注増加傾向や、BCP(事業継続計画)対策の重要性を実感した同社は、製造拠点の分散化に着手。第二拠点として淀川工場を新設し、有事にも供給可能な生産体制を構築した。
約30億円を投じて建設された新工場は地下1階、地上6階建てとなっており、1階は部品・製品の搬出入に関わる物流機能を備え、3~5階はガスセンサーの製造フロアとして使用される。中でも3階には、MEMSセンサの製造工程が集約されており、センサ素子形成、組み立て、通電による安定化処理や品質検査に至るまでを一気通貫で行う。製造フロアには、同社製のガス検知器や酸素濃度計が設置されており、現場従業員が安心して作業できる環境が整っている。
地域の防災力向上に貢献 グローバル展開も視野に
また、新工場は大阪市の「津波避難ビル」に指定されている。
警備員が常駐し、避難者の受け入れを24時間体制で行うことが可能。最大収容人数は154人で、3日分の物資を備蓄している。23年には大阪市淀川区との包括連携協定を締結し、その一環として同社製火災警報器「PLUSCO(プラシオ)」300台を寄贈した。これらの取り組みは、「防災能力の向上に貢献し、地域の皆様への感謝を示す」(髙橋良典社長)といった姿勢の表れと言える。
1月23日に行われた開所式で、髙橋社長は「今後、海外でのガス警報器の需要増に対応すべく、当社ではグローバル展開を推進していく。淀川工場はその軸となる」と新工場の意義を述べた。世界中の人々の安全・安心を実現する―同社の挑戦はまだまだ続く。