ローリーからタンクコンテナに転換 LNGバンカリング需要拡大に期待

2025年3月10日

【西部ガス】

西部ガスは昨年10月、長崎港小ヶ倉柳埠頭で、福岡造船が建造したLNG燃料船にISO(国際標準化機構)タンクコンテナを使用したTruck to Ship(トラックツーシップ)方式によるバンカリングを実施した。トラックツーシップ方式では、岸壁に着岸した船に、陸側ローリーが燃料のLNGを供給する。

同社は2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、天然ガスシフトを大きな柱としており、内航船事業会社「KEYS Bunkering West Japan」への出資やローリーによるバンカリング事業を推進し、船舶燃料のLNG転換に注力している。

トラックツーシップ方式でバンカリング作業中


メリット多いコンテナ式 地域経済発展にも期待

トラックツーシップ方式は既存のLNGローリーを利用できるため、初期投資が少なく導入しやすい。ただ、都市ガス需要の高まる冬場にローリーの配車が殺到するため、その確保が課題だった。そこでローリーの代用としてISOタンクコンテナを使用した。

大きなメリットは、積載量が30%向上するため輸送回数が減少することだ。さらに、保冷性に優れLNGを長期保管できる。マイナス162℃をキープするにはローリーでは7日間が限界だったが、タンクコンテナでは60日間可能だ。加えて、タンクコンテナを切り離して運用できるため、運転手の拘束時間の削減にもつながる。運転手の残業時間規制問題、いわゆる「2024年問題」にも対応できる。

船舶燃料の大転換期を迎える中、50年時点でLNGの同燃料用途別シェアは35%と予測されている。また、28年にかけてLNG燃料船は約1000隻が就航の見込みだ。船の寿命が20年前後であることを考慮すれば、50年までは修繕船を含めLNG燃料船へのバンカリングの需要増が想定される。さらに、今後は貨物船のほか、フェリーや大型客船などにもLNG燃料が使われると考えられている。

課題はLNGを補給できる場所が限られていることだ。今後、柔軟に燃料補給ができる体制を確立していくことが望まれる。

同社は今回、福岡の造船会社の船に長崎の港でバンカリングを実施したが、これには営業的な意味がある。北部九州でLNGバンカリングが可能になることで、地元の造船会社の受注増と周辺地域の需要の取り込みにつながる。同社では、LNGバンカリングがLNG燃料船の定期航路や寄港の誘致にもつながる可能性があり、そうなることで地域経済の発展に貢献できると見込んでいる。LNG燃料船へのバンカリングが地域へもたらす恩恵に、多くの期待が寄せられている。