【記者通信/3月6日】福島事故巡る刑事裁判 旧経営陣の無罪確定へ

2025年3月6日

最高裁判所は3月6日までに、2011年の福島第一原発事故を巡って東京電力の旧経営陣3人が業務上過失致死の罪で強制起訴された裁判で、裁判官全員の意見一致で上告を退ける決定を出した。10mを超える津波の予見性を認めなかった1審、2審判決を支持。これにより、元副社長2人の無罪が確定した。勝俣恒久元会長は昨年10月に死去し、起訴が取り消されている。

福島事故を巡って東電や旧経営陣が被告となった裁判は、①刑事裁判、②民事裁判(株主代表訴訟)、③民事裁判(住民集団訴訟)──の三つに分けられる。

今回、判決が確定したのは①刑事裁判で、検察の不起訴処分が妥当だったかどうかを審査する検察審査会の議決による強制起訴で始まった。福島事故後、検察は福島県の住民らから告訴状などの提出を受けたが、13年9月に不起訴の判断を下していた。しかし14年7月、検察審査会が経営陣3人について「起訴すべき」と議決。その後、再捜査を行った検察は再び不起訴処分としたが、15年7月に検察審査会が再び同様の議決を下した。2度の議決を受けたことで、旧経営陣3人は強制起訴された形だ。

争点となったのは、震災前の02年に国の機関が公表した予測「長期評価」の信頼性だった。1審と2審は、前書きに「誤差を含む」「利用に注意が必要」などの記載がある点や首相を長とする中央防災会議の報告に盛り込まれなかったことなどから、東電側が10mを超える津波を予測できなかったとして無罪を言い渡していた。

6月に株主代表訴訟の高裁判決

一方、旧経営陣の民事上の責任を問う②株主代表訴訟は、東京地裁が22年7月、今回の刑事訴訟と異なり、旧経営陣4人に13兆3210億円を支払うよう命じた。現在、東京高裁で控訴審の審理中で、今年6月に判決が言い渡される見通し。刑事と民事で異なる判断が出ている状況が覆されるのか注目される。

住民が国や東電に賠償を求める③集団訴訟では、最高裁が22年7月、東電の賠償責任は認めたが、国の責任は認めないとする判決を出した。原子力損害賠償上が事業者の無過失・無限責任を規定しているためだ。原子力の最大限活用に向けては、原賠法の規定見直しを求める声も多い。