水素導入拡大を目指すドイツ 電気事業者の活路となるか

2020年10月14日

【ワールドワイド/経営】

水素社会構築に向けた機運が世界的に高まる中、2050年カーボンニュートラルを目指す欧州各国の間でも、燃焼時にCO2を排出しないクリーン燃料である水素に対する期待が近年高まっている。20年6月にはドイツが「国家水素戦略」を策定し、その翌月にはEUも独自の水素戦略を発表した。

水素の長所は、水素そのものを燃料電池自動車(FCV)などに利用できるほか、CO2と反応させることで天然ガスの主成分であるメタンやさまざまな化学物質を生成し、建設、工業、石油精製など多様な部門で低炭素化を実現できる点にある。将来の脱炭素化のためには運輸・暖房部門などで電化を進めることが必須であるが、電化が困難な長距離輸送や工業プロセスにおいてカーボンフリー水素の活用が鍵を握るとされている。

ドイツの国家水素戦略は、国内市場の確立のため30年までに水電解装置5GW(1GW=100万kW)を導入し、可能な場合はさらに35年まで(遅くとも40年まで)に追加で5GWの導入を目指す野心的なビジョンを掲げている。同戦略の実現のため、ドイツ政府は90億ユーロ(約1兆800億円)という巨額の資金を拠出する計画である。

本戦略の特徴は、再エネ由来のグリーン水素のみを長期的に持続可能とした点にある。カーボンフリー水素の製造方法には再エネ余剰電力を利用した水の電気分解のほか、化石燃料の改質(CCSと組み合わせたいわゆるブルー水素)などがある。英国などにおいては導入の中心はブルー水素とされ、グリーン水素は製造コストが高額であるなどの理由から将来的に果たす役割は限定的とされるが、ドイツの戦略はこれとは対照的である。

ただし、ドイツにおいても国内の再エネ導入量だけで将来的な水素需要を賄うのは難しいことから、再エネポテンシャルが豊富な国との間で協力体制を構築し、これらの国で生産される水素の輸入を目指すとしている。

水素戦略による支援強化の流れを受けて、ドイツの電気事業者も水素関連の実証実験や新たなビジネスに積極的に乗り出している。顕著なのは、RWE、ユニパーといった大手電気事業者が製鉄事業者と協働した水素製造プロジェクトである。グリーン水素製造から事業者が十分な収益を確保できるようになるのは早くても30年以降という見方が強いが、電気事業者が水素を通して脱炭素化を目指す業界と協働する動きは、今後欧州で広がっていくことが予想される。

佐藤 愛/海外電力調査会調査第一部