暗殺未遂でノルドストリーム2に暗雲

2020年10月16日

【ワールドワイド/コラム】

ロシア産の天然ガスをドイツに運ぶパイプライン計画、「ノルドストリーム2」の稼働に暗雲が垂れ込めてきた。ドイツ政府は、西シベリアからモスクワに向かう機上で意識不明となり、その後、ドイツの病院に搬送されたロシアの野党指導者ナワリヌイ氏について、殺傷力の高いノビチョク系の神経剤が使われたと断定。ナワリヌイ氏が反体制派の有力なリーダーであることから、ロシア当局による暗殺未遂の疑いが強いとして、独政府は詳細な説明を求めている。ドイツのマース外相は、ロシアが暗殺未遂疑惑について適切な行動を取らなかった場合、ノルドストリーム2計画の見直しもあり得ると言明。メルケル首相も計画を再検討する意向を示した。

ノルドストリーム2は、バルト海を通ってドイツとロシアを結ぶ全長1200㎞のパイプライン。既に大部分の工事を終えている。脱原発・石炭の方針を掲げるドイツにとって、発電用として今後、天然ガスはより欠かせない燃料となる。ロシアとしても、関係が悪化するウクライナを通さずガス需要が増える西欧にガスを売りたい意向があり、両者の思惑が一致して建設が進んできた。

一方、米国はこのパイプライン計画に対して反対の姿勢を示してきた。2017年に発効した「ロシア・イラン・北朝鮮制裁法」は、ノルドストリーム2を阻止することが目的の一つだったといわれる。6月に上院に提出された制裁強化法案では、今までの建設などに携わる事業者だけでなく、保険や法的支援、港湾サービスに携わる企業も制裁の対象としている。 仮に中止となった場合、脱原発・石炭にかじを取っているドイツをはじめ、西欧各国は大きくエネルギー政策の見直しを迫られるかもしれない。