【東邦ガス 山碕社長】ガス事業を主軸に新事業への投資を加速 将来の成長への礎築く
新中計は高い目標設定 全社一丸で達成目指す
井関 社長就任前の3月27日には、次期社長として「中期経営計画2025―27」の発表に臨みました。
山碕 策定作業の途中までは社長になるとは思ってもいませんでしたが、人事・財務を所管する役員の一人として需要家やお取引先、社員、投資家といったあらゆるステークホルダーを意識しながら議論に参画いたしました。検討の終盤では、その前の中期経営計画やグループビジョン策定に企画部門の担当役員として携わっていましたので、前回と今回とで大きく方向性は変わらないものの、ビジョンで示したゴールに向け新たな中計がどのような位置付けにあるのかをきちんと示すことにこだわりました。

井関 その前中計の成果をどう評価していますか。
山碕 2022~25年度の4年間で累計キャッシュフロー2100億円以上、25年度のROA(総資産利益率)3%程度、D/Eレシオ(負債資本倍率)0・6倍程度といった目標を1年前倒しで達成することができました。計画を作った立場からすると、正直、現実的で地に足のついた目標だったかもしれません。目標をもうひと伸びさせても良かったと思います。それに比べると今回の中計は、チャレンジングな目標です。全社一丸となって、達成を目指し頑張っていきます。
井関 新中計のポイントをお聞かせください。
山碕 足元では効率的な経営への期待が高まっています。当社はガス事業を主軸とする事業者ではありますが、将来の成長を踏まえると新たな事業の柱を育てていかなければなりません。それをより明確にするため、新中計では、例えば投資計画で新事業への投資配分を高くする戦略などを打ち出しました。これは、対外的なメッセージもさることながら、むしろ、われわれ自身に対して意気込みや覚悟を示すという側面もあります。
初の大型電源建設へ 過度な市場依存を回避
井関 新たな柱となる事業が、電力と海外事業ですね。
山碕 はい。電力事業については、参入して数年が経ち幸いにもガスとセットでのご提案などを通じて契約数を伸ばすことができました。ただこの間は、調達環境がなかなか安定せず、いかに電力を安定的に調達するかに苦心してきました。そこで、自ら発電事業に参画するべく、29年度の稼働を目指しJERAと共同で知多火力7号、8号機を建設することを決めました。これにより、効率の高い電源を自社電源として、活用できるようになります。ベース電源のほか、市場変動に対応する調整力として蓄電池なども選択肢に加え、過度に市場に依存することがないよう手を打っているところです。

井関 知多火力は、東邦ガスにとって初めての大型電源になります。
山碕 そうです。当社単独で進めるには規模が大きくノウハウの面でも不安がありましたので、パートナーと組むのが最も現実的だと考え、かなり以前から水面下でいろいろな企業と検討を進めていました。ですが、度重なる発電事業を巡る規制変更やCNなどの影響もあってなかなか具体化できませんでした。昨今は電力の将来需要の見通しですとか、CNに向けたトランジション期においてガス火力の重要性が見直され、投資意思決定ができる環境が整ってきました。
井関 電源としてのバイオマス発電所の活用については。
山碕 中部電力などと共に八代バイオマス発電所(熊本県八代市)を建設し、昨年6月に営業運転を開始しました。九州からエリアを超えて調達できないわけではありませんが、当社の電力小売事業に資する電源という位置付けではありません。再生可能エネルギー電源を一定容量保有するという意味合いが大きいです。
井関 分散型電源のコージェネレーションにも引き続き力を入れていかれますか。
山碕 日本全体で当面は、電源自体が足りていない状況が続いています。コージェネレーションのエネルギー効率の評価、計算手法の仕方に対する意見はいろいろあるようですが、全体としてはエネルギー効率が高い技術ですので、これを使わない手はありません。コージェネのメリットを評価いただき、当面の間は天然ガス転換によって累積的なCO2排出量を減らしていかなければなりませんし、エネルギーレジリエンス(強じん化)に資する分散型電源として活用していくべきだと考えています。