【東邦ガス 山碕社長】ガス事業を主軸に新事業への投資を加速 将来の成長への礎築く
井関 産業・業務用の天然ガス転換の余地はありますか。
山碕 東海エリアでは、比較的早い時期からCO2排出対策に前向きに取り組んできた企業が多く、コージェネの導入も進んでいます。一方で、重油をエネルギー源としている企業があり、まだまだご提案できる需要先はあると考えています。天然ガス利用のメリットを正確にお伝えし、評価いただかなければ産業・業務用需要家は受け入れられません。これについては、ガス業界として、社会に対する働きかけをしっかりと行っていくことも必要だと思います。
井関 海外事業の取り組みについてはいかがですか。
山碕 これまで大きく二つの分野に取り組んできました。一つは、北米や豪州、欧州における再エネ事業です。日本では実績の少ないビジネスに広く出資し、収益化につなげようとしています。もう一つは、東南アジアにおけるガス事業です。現在、4カ国の現地企業に出資し、社員を送ってガスの下流に近い領域でビジネスを展開している国もあります。今は、各国ともCNの意識が高まっています。日本に比べ経済成長率が高く、天然ガスの需要も増加し続けていますから、当社が国内で手掛けてきた燃料転換ですとか、ガスの普及拡大に資するノウハウが活用できます。本業であるガス事業となんらか関係があり、当社が優位性を生かせる領域でビジネスを広げていきたいと考えています。
井関 一時期、アクティビストによる株式の大量保有が話題となりました。現状についてと、何か講じている対策を教えてください。
山碕 株主・投資家が誰であるかにかかわらず、経営方針や財務戦略に関する株式市場からの意見に真摯に耳を傾け、取り入れるべきことは取り入れ、企業価値の向上に取り組んでいます。
お客さまの信頼獲得 挑戦する風土を醸成
井関 LPガス事業にも力を入れていますね。
山碕 人口減少や消費機器の効率化などによって市場は緩やかに縮小しますが、第7次エネルギー基本計画においても、災害に強いエネルギーとして評価され、重要な役割を果たすことが期待されています。当社グループとしてこれからも東海地区を中心としたエリアのLPガス供給を支えていきたいと考えます。昨今では、広域エリアへの進出やコアエリアでのシェア拡大により、お客さま数は増え続けています。都市ガス、LPガスの双方を手掛けていることを強みに、これからもうまくすみ分けながら事業展開していきたいと思います。
井関 最後に、40、50年に向けてどのような会社像を描いていますか。
山碕 40、50年を見通すことはなかなか難しいのですが、このエリアでお客さまの信頼を得られる企業として存在していたいと思っています。そのためには企業として成長し続けることが重要で、今から挑戦する風土、意識を育て根付かせていくことに努めています。私が経営トップを務める間は、われわれは成長し続けなければならない、そのためにお客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまからの信頼を得られ続ける活動をしていかなければならない、ということを念頭に置きながらまい進していきます。
井関 今後のご活躍を期待しています。本日はありがとうございました。
対談を終えて
社長就任から3カ月。直前に発表した「中期経営計画2025-27」の策定議論には専務執行役員の立場で参画し、自ら実行に移すことになった。現実的だったと称する前中計から、あえてハードルを上げたことが、挑戦への意欲を物語る。第一印象は、物静かな雰囲気だったが、発せられる言葉は対照的で力強い。地域密着のインフラ企業として成長を続けることが顧客からの信頼獲得につながる―。目指す会社像は明確だ。(聞き手・井関晶)