伊勢湾岸エリアで一体運用 基地間の連携で効率運用を実現

2020年10月4日

【ガス設備編/東邦ガス】

ものづくりの一大集積地を周辺に抱える伊勢湾の沿岸部には、エネルギー供給に欠かせない主要設備が立ち並ぶ。東邦ガスの知多緑浜工場もその一つ。2001年の運転開始以降、LNGタンクや気化器などの増設により、現在はLNG貯蔵容量62万㎘で年間ガス製造量は18億9000万㎥(19年度実績)に上る。実に、同社管内の供給量の約半分を賄う主力工場だ。

伊勢湾沿岸部に立地するほかの基地と一体運用を行っている点においても重要な拠点といえる。隣接地にはJERAと共同所有する知多LNG共同基地、対岸には四日市工場が立地する。同社は3カ所の基地を運用する中、海底の伊勢湾横断ガスパイプラインなどを使い、基地間で送ガスを相互にバックアップする体制を構築。また、知多地区と四日市地区間で送ガス量を調整し、LNGの在庫管理・調整が効率よく実施できている。

2カ所の桟橋により、LNGを効率的に受け入れられる

さらに、知多地区には受け入れ桟橋を2カ所に設置。知多LNG共同基地や知多エル・エヌ・ジーの知多LNG基地と共用することで、LNG船の同時着桟による2基地への同時受け入れといった効率的な運用を実現している。

このように、都市ガス供給の要であることから、コロナ禍にあってもガス製造に影響を与えないよう、さまざまな対策を講じて供給を継続している。運転員は、更衣室や食堂、トイレなどを日勤者と分けて使用し、動線を分離。中央監視室には、運転員以外の入室を禁止した。また、通勤時には公共交通機関は使わず、車での通勤を行っている。

一方、日勤者は勤務体制を2班に分け、執務室を分離して業務に当たるとともに、外部からの入構者に対してはマスク着用や入り口での検温、管理センターへの立ち入り制限などの対策を取っている。

デジタル化が奏功 非接触の引き継ぎを実現

同社が以前から進めてきた取り組みでコロナ対策に奏功したのがデジタル化だ。ペーパーレス化への取り組みの一環で、従来から運転員が勤務を交代する際に使ってきた引き継ぎ帳を廃止。代わりに大型のテレビモニターを導入し、業務内容を映しながらの引き継ぎを行っていた。

「この取り組みのおかげで、今回のコロナ対策として非接触でのリモート引き継ぎがスムーズに行えています」と、生産計画部生産計画第二グループの小澤康昭マネジャーはその効果を話す。運転員は24時間365日、2交替制で業務に当たっており、運用の継続には引き継ぎが欠かせない。接触を回避しながら引き継ぎができたことは、コロナ禍における感染拡大を防止し、供給維持に大きく貢献している。

そのほか、同工場では設備面においても供給維持の対策を取っている。主要設備には予備機を設置するとともに、配管や電源は2系統化し、ポンプや気化器、モーターといった機器類を分散して系統に接続することで、メンテナンス時にも送ガスを継続できる運用を行っている。

海岸部の立地上、自然災害への対策も重要だ。伊勢湾は志摩半島と渥美半島が天然の防波堤の役割を果たしており、南海トラフ地震による津波は、海抜基準で4m程度と想定されている。
小澤マネジャーは「工場の地盤は津波が想定される高さ以上にあるものの、越波による浸水などに備え、保安レベルを向上させる対策を実施しています」と話す。

重要設備を対象に、冠水防止対策として、電気設備の移設・かさ上げをはじめ、水密扉への取り換えやケーブルピット(ケーブルを敷設するための床下の溝)の止水を実施した。また、工場北東部にあるヨットハーバーからヨットが漂流して工場設備に衝突することを想定し、漂流物防止柵を設置。津波高さ検知装置を設置するとともに、カメラを増設し、監視機能も強化した。

同工場は来年、運転開始から20年の節目を迎える。コロナ禍や自然災害への対策とともに、各設備の劣化状況や他工場での実績などを加味した高経年化対策も推進しながら安定供給を続けていく。