袖ケ浦LNG基地を公開 7月には発電所が運開予定
【東京ガス】
東京ガスは5月26日、袖ケ浦LNG基地(千葉県袖ケ浦市)と3月に敷地内に完成した袖ケ浦発電所を報道陣に公開した。同基地は1973年に操業を開始。基地内にある地上型と地下型のLNGタンクは合計15基で、世界最大級の貯蔵量を誇る。これまでに日本の累計輸入総量の約2割に当たる約4億t、タンカー約9000隻分のLNGを受け入れてきた。発電所の稼働によって、今後は電力安定供給に向けた新たな役割を担うことになる。

原産国からやってくるLNG船が桟橋に停泊すると、12~13時間をかけて構内にLNGを受け入れる。オーストラリアやアメリカ、マレーシア、カタールなど調達先は多様だ。
マイナス162℃という超低温のLNGは、海水の熱を利用して気化(ガス化)する必要がある。その際に用いるのが、オープンラック式ベーパーライザー、通称ORVと呼ばれる設備だ。垂直に配置された多数のパネルの内部をLNGが流れ、その外側を大量の海水が薄い膜となって流れ落ちるように散布。するとLNGは海水の熱によって温められ、ガスとなって排出される。ORVは海水を直接熱源として利用するため、燃料が必要なく、エネルギー効率が高い。シンプルな構造のため、保守点検も容易だ。
気化したガスは熱量調整した後、利用者がガス漏れに気づくように腐臭を付ける。製造した都市ガスは、6万㎞を超える導管網を通して需要家に送られるが、ガス管がつながっていない都市ガス事業者や大口需要家にはローリーでLNGを届け、現地でガス化している。袖ケ浦LNG基地では、現在66カ所の輸送先があるという。
高い起動即応性 自然共生サイトに認定
3月に敷地内に完成したのが、ガスエンジン10台(各9780kW)で構成される袖ケ浦発電所だ。ガスエンジンは短時間で起動し、すぐに発電を開始できる特性を持つ。こうした起動即応性の高さによって、再生可能エネルギーの導入が拡大した今、調整力としての活用が見込まれる。取材時には7月以降の運開に向けて、最終調整が行われていた。
広大な袖ケ浦LNG基地にある緑地は、昨年9月に環境省から「自然共生サイト」の認定を受けた。同基地は操業以来、管理計画に基づく適切な緑地管理や生態系調査を続け、地域自然との調和を図ってきた。
脱炭素へのトランジション(移行)に向けて、LNGの役割は高まっている。袖ケ浦LNG基地は今後も首都圏の安定供給の中心だ。