【コラム/7月24日】“壊国”日本、今どきの政策を考える~参院選物価対策を振り返る

2025年7月24日

飯倉 穣/エコノミスト

1、テーマ選択の不思議

猛暑が続く。参院選があった。公約は、憲法・外交安保、経済財政、社会保障、多様性等で、各党各様である。その中で耳目に届く主張は、「物価問題、給付か減税か」という争論だった。

報道もあった。「参院選公示20日投票 石破政権を問う 物価高対策 現金給付か減税か」(朝日25年7月4日)。「与野党「分配」鮮明に インフレ対策現金給付や減税訴え 社会保障改革保険料減や年金底上げ 規制改革や貿易成長戦略乏しく」(日経同)。選挙中報道は、主として物価を追いかけた。物価問題の基本を考えた場合、この話題の選択と各党主張は、如何だろうか。金融政策不全、国債残高、財政赤字で困窮する国が、借金で散在する。賢明な大人の候補者の主張なのか。この風景を見て国が壊れると嘆息する著名ジャーナリストもいた。

改めて、選挙を巡る経済論議の低調さ、現在も継続する物価問題の扱いとあるべき政策を考える。


2、物価・賃金・成長率の状況

近年の物価の動きをどう捉えるか。それが政策立案の前提である。輸入物価、企業物価、消費者物価、賃上げの動きの再確認が必要だ。今次の状況は、コロナ中のロシア侵略・エネ資源価格上昇に始まる。

輸入物価指数前年比(2020年=100、円ベース)は、20年△10.3%下落後、ロシア侵略ウクライナ戦争で21年21.6%、22年39.1%と高騰した。その後エネ価格の落ち着きで23年△4.7%、24年円安で2.7%だった。25年に入り第1四半期△0.5%、第2四半期△10.0%と低下した(契約通貨第1四半期△0.6%、第2四半期△4.6%)。つまり21年、22年のエネ・資源価格に起因する上昇が一段落し、為替の影響も小幅で、安定化している。

この効果で企業物価指数前年比(同)は、コロナで落ち込んだ後(20年△1.2%)、21年4.6%、22年エネ価格の影響で9.8%と上昇、23年4.4%、24年2.3%と沈静化した。ただ本年に入り25年第1四半期4.2%、第2四半期3.4%と水準が高い。要因は円安の他に有りそうだ。

消費者物価はどうか。総合指数前年比は、20年0.0%、21年△0.2%の後、エネ価格等上昇で22年2.5%、23年3.2%、24年2.7%だった。その後25年第1四半期3.7%、第2四半期3.4%と高めで動いている(生鮮・エネ除く総合25年第1四半期2.5%、第2四半期3.0%)。つまり22年以降エネルギー・食料関係で上昇し、その後、加えて工業製品等の値上げの影響が続いている。

賃金はどうか。民間主要企業の賃上げは、20年2.0%、21年1.86%、22年2.20%の後、23年3.60%、24年5.33%、25年は5.25%(連合7月3日集計結果)と直近3年間高率だった。政経労の合言葉「物価見合いの賃上げ」の影響が大きい。

そして経済成長率は、依然低迷している。実質GDP前年比は、20年コロナで落ち込み(△4.2%)、その後21年2.7%、22年0.9%、23年1.4%、24年0.2%、25年度政府見込1.2%である(名目20年△3.3%、21年2.5%、22年1.3%、23年5.5%、24年3.1%、25年度政府見込2.7%)。

物価対策の基本は、この指標の関係をどう見るかで方向が決まる。

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