自ら墓穴を掘った朝日 事実の尊重を揺るがす社説

2020年10月12日

【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOIKA代表

さすが、レディー・ガガさんらしい、と思った。

NHK9月1日「有名歌手マスクしたまま歌う コロナで打撃 音楽業界模索続く」である。

新型コロナウイルス禍と闘う業界の活動ぶりを紹介した。

「アメリカの音楽専門チャンネルが8月30日に主催した、音楽賞授賞式で、人気歌手のレディー・ガガさんとアリアナ・グランデさんがマスクをしたまま歌うパフォーマンスを披露しました」

ユニークなのは次の部分だ。

「ガガさんがつけたマスクは衣装に合わせた近未来的なデザインで、『何度も繰り返しますが、マスクを着けてください。ほかの人への敬意の印です』とスピーチで訴えました」

このウイルスに感染すると、発症していなくても人にうつす恐れがある。マスクを着ければ、自らを守るだけでなく、ウイルスを撒き散らさない。そんな思いやりの効果を強調したのだろう。

密閉された商業施設やエレベーター、電車でもマスクを着けない人がいる。持病などでマスクができない場合もあるだろう。マスク着用で、そうした人も守れる。敬意の大切さを思う。

ガガさんは、東日本大震災の時も直後に来日した。観光庁サイト(2011年6月24日)に、「感謝状を贈呈しました!」の記事が残る。ガガさんのあいさつが力強い。

「日本が安全だということを、世界中の観光客がこの美しい国に来てもらえるように伝えていきたい。東京に滞在中は、この素晴らしい街を楽しみながら、リトルモンスターとふれあいたい」

敬意の片りんもないのが、朝日8月29日社説「『安倍政治』の弊害 精算の時」だ。安倍晋三首相の辞意表明を受けて、「首相在任7年8カ月、この間、深く傷つけられた日本の民主主義」と総括した。安倍政権は国政選挙に6連勝してきた。民意は無視なのか。

「傷つけられた民主主義」を実証する狙いだったのだろう。世論調査を実施した結果が、朝日9月4日「安倍政権を評価『71%』本社世論調査」だ。安倍政権支持が圧倒した。朝日はズレてる。

北海道寿都町が高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地に応募を検討中、と報じられてから、事実への敬意も揺らぐ。京都8月18日社説「核ごみ処分場 交付金での誘導見直せ」は一例だ。

当事者を取材した形跡がない。なのに、「調査を受け入れると、2年間で最高約20億円の交付金が支給される。同町は人口減少が進んでおり、財政維持の一手としてとらえているようだ」と、「金絡み」の印象操作を試みる。

翌日の日経ビジネス電子版8月19日で、片岡春雄町長がインタビューに答えている。

「町は風力発電を早くから導入してきた」「エネルギー政策全般を勉強し、地域としてどのように協力していけるかを話し合ってきた」「出口の議論がない原発の政策に何とか風穴を開けられないか」。信念が伝わってくる。

京都社説は金に固執する。「交付金で誘導するような手法は見直すべきだ」と述べ、日本学術会議も12年に同様の見解を出したと主張する。だが、学術会議が「しかるべき補償措置が地域に対してなされることを妨げるものではない」と、経済的な地域共生策を認めている事実には触れない。

読売9月3日「新聞週間標語が決定」によると、代表標語は「危機のとき 確かな情報 頼れる新聞」らしい。そう願いたい。

いかわ・ようじろう デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員。