【オピニオン/9月14日】再可エネ開発に伴う環境問題に対応するための法的措置を

2020年9月14日

福島伸享/前衆議院議員

先日、私の地元の茨城県笠間市の太陽光発電の乱開発の現場に編集部の皆さまに取材に来ていただいた。「百聞は一見に如かず」で、現場の住民の声を聞き、ドローンで上空から撮影をしてみると、問題の深刻さを身をもって理解していただいたことと思う。10月号の『エネルギーフォーラム』にそのルポタージュが掲載される予定とのことなので、ぜひご覧になっていただきたい。合わせて近日中にエネルギーフォーラムのホームページにも、衝撃的な動画がアップされるとのことなので、こちらもご覧いただきたい。

今回取材した地点は、笠間市本戸地区。約4キロ四方の範囲内に集落を取り囲むように3カ所のメガソーラー開発が進められている。そのうちの一つ、地元では「富士山」と呼ばれる山の斜面では、地元には「太陽光発電を作らせてもらいます」と話が来たので、畑の横に作るようなものを想像して同意したら、いつの間に山が丸裸になっていたと言う。最初に説明に来た業者から別の業者へと転売され、「今の事業者は誰なのかもわからない」と地元の人は言っていた。

さらに問題なのは、北半分の土地は当初の開発業者が倒産して放ったらかしにしていて、地肌を出した無残なはげ山のままでいるところである。地肌には雨水が流れてできた筋が何本もできていて、昨年の台風19号の時には滝のように流れて、隣の集落と結ぶ道路を埋めてしまった。今も少しずつ土砂は沢伝いに流れ続けて田んぼ2枚を埋め尽くし、ちょっとした雨でも道路は泥の河になってしまうという。でも、事業者は倒産してしまったため、誰に補償や対応を求めたらいいのかもわからず、道路の復旧も市が公共事業として行っているので、結局市民の負担となる。

もう一つの地点では、山の稜線を挟んで東側を中国系企業(10MW)が、西側を韓国系企業(12MW)が開発している。東側は現在造成中で、笠間市内に入ればどこからでも見えるくらい、大々的に地肌が出て無残な姿を晒している。西側は、数名の地権者が売ったり貸したりした山林を縫ってヘビの抜け殻のように太陽光パネルが広がっている。

住民は、「富士山」のメガソーラーで起きたような環境の破壊を恐れて反対運動を行ってきたが、法的には止める手段はない。FITの期限である20年が過ぎたら、パネルを張ってある場所がその後どうなるかもわからない。地表を削って岩盤まで達している状況では植林も困難だと、地元の造園業者は言っている。両社とも、外国企業の子会社が事業主体となっているので、期間が終われば海外に戻って連絡もつかなくなってしまうのではないか、と地元の人は恐れている。でも、それを止める法的な手立てはない。

 第5次エネルギー基本計画に基づき主力電源化が進められる再生可能エネルギーだが、この笠間市の例のように、外国企業が日本人から土地を買い、県外企業が外国人労働者を使って建設し、外資系企業が運営し、20年間利益を貪り尽くせば撤退する。しかも、その利益の源は、FIT制度に基づいて日本の電気利用者に上乗せされている電気代。地元は、土砂の流入や森林の破壊などの環境問題に苦しみ、一度壊された環境は長い間戻らない。土地を売った人以外に利益は何もなく、むしろ修復工事に地元の人の税金は使われる。これでは、一体誰のため、何のための政策なのか、根本的な再検証が必要となるだろう。

経済産業省はエネルギーの供給が所管なので、関係法令に基づき発電がしっかりと行われるように監督はしても、環境の保護や地元との共生の観点からは、さまざまな政策を講じているとはいうものの、強制力の伴う立法措置は行おうとしない。電力システム改革の前までは、事業許可を受けた一般電気事業者が「公益事業」として発送電も小売りも一体で事業を行ってきたから、地域から利益をむさぼるだけの事業形態は起こりえなかった。一方、発送電分離がされ発電への参入が自由となり、かつFIT制度という一定期間利益が保証された環境の下では、公益性や環境問題などの外部経済を考慮しない短期的な利益獲得だけを目指す事業者の排除はできない。  筆者は、これまでの電力システム改革の流れを否定する者ではないが、新しい電力システムに合わせた、環境問題や地域との共生などの公益的課題を解決するための必要な法制度の整備を行うことは喫緊の課題であろう。縦割り行政の間に紛れて、おざなりになるのは許されることではない。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2009年衆議院議員初当選。東日本大震災からの地元の復旧・復興に奔走。