定置式ガス検知センサーを新開発 海外の大型プラントに展開へ

2020年11月3日

【理研計器】

理研計器は、新たに開発した防爆型定置式ガス検知部「SD-3シリーズ」の販売を9月から開始した。同機器は大気中の可燃性ガスや毒性ガス、酸素を連続で監視し、ガスの漏洩時に設定値を上回る濃度を検知すると警報を出して知らせ、作業員やプラント運用の安全性を確保する役割を果たす。

今回の新シリーズは、海外の大規模プラントへの展開を視野に入れており、11月中旬ごろから出荷を開始する予定だ。海外の市場投入には、欧州や北米などの国際規格で定められた防爆検定や性能・パフォーマンスへの適合が必須となる。そこで、センサーをはじめ、機器本体の構造や材質などを抜本的に見直し、新たな製品として完成させた。

国際規格に適合する製品として開発した

まずセンサーについては、従来の定置式検知器センサーから一新した「Fセンサ」を開発した。従来は使用できる温度範囲がマイナス20℃~60℃だったが、Fセンサはマイナス40℃~70℃に対応。極寒の地や熱帯地域など、さまざまな気候帯での使用が可能になった。
また、検知対象ガス・濃度により5種類の検知原理をラインアップした。

例えば、赤外線式では毒性ガス、可燃性ガスに対応。ガス検知用と比較用の2種類のセンサーを搭載し、高精度で測定できる。センサー自体の劣化状態や寿命を診断できる機能も新たに搭載した。同センサーは、今後開発される定置式ガス検知器にも搭載していく予定だ。

2種類の構造を採用 毒性ガス検知が充実

次に、本体部分はステンレス鋼を使用し、センサーと同様、幅広い温度範囲での使用を可能にした。検知できる毒性ガスの種類が充実している点も特長だ。定置式検知器は通常、耐圧防爆構造で、ガスが検知部で着火しても火炎が外部に広がらない構造となっている。

ところが、同構造だとセンサーホルダに火花の広がりを防ぐ金属キャップがあり、吸着性の高い毒性ガスを検知部に引き込めない。同シリーズでは、センサーホルダに本質安全防爆構造(電気を制限して機器自体が点火源になり得ないようにした構造)のバリアを付ける併用タイプを用意。バリアの設置工事を行わなくても、さまざまな毒性ガスの検知が可能になった。

同社ではセンサーと本体部分の両方を自社で開発しており、ユーザーのニーズに応じて柔軟に対応できる機器の開発が可能だ。出力信号は、ユーザーへのヒアリング情報をもとに、相互通信やガス濃度以外の情報を伝達できるHART通信などをラインアップした。

海外の性能規格は、日本より厳しい要求事項が規定されている。こうした中、日本でも海外規格に適合した品質を求める動きが出ており、今年4月、可燃性ガス検知器のJIS(日本産業規格)が改訂され、国際規格を目指す方向性が示されている。海外規格に向けて開発された同シリーズは今後、日本のプラントでも活躍の場を広げていきそうだ。