地産地消を柱に経営多角化 マイクログリッド実証に挑戦

2020年11月4日

【小田原ガス】

地元企業などとの連携を強化し、再エネ開発や電力小売り、さらにはEV(電気自動車)シェアリングなど、小田原ガスは新たなエネルギーサービスに果敢に挑戦している。その裏には、「ゼロエミッションが実現するなら、ガス導管は座礁資産になりかねない」(原正樹・小田原ガス社長)との危機感がある。

同社はここ10年ほどで、さまざまな新規事業を手掛けてきた。まず取り組んだのは再エネ開発だ。計画停電を経験した東日本大震災を機に、24社(当時)の地元企業が出資し、再エネ発電事業者「ほうとくエネルギー」を設立。現在、太陽光発電を中心に2100kWの再エネ電源を保有する。

その後スタートした電力小売り全面自由化を受け、2017年に地域電力の先駆けである「湘南電力」の株式を取得し、経営に参画した。地域で発電した再エネを活用し、神奈川県内の需要家に電力を供給。その収益の一部を湘南ベルマーレなどのパートナー企業に還元し、エネルギーや資金の地域循環を目指している。

今の調達先の主軸は卸電力取引所であるものの、非FIT再エネについては「ほうとくエネルギー」以外からも県内で調達先を広げ、18年時点で約1500万kW時と、調達量を年々伸ばしている。

「0円ソーラー」の利用拡大 再エネ充電のEVをシェア

湘南電力の低圧の顧客件数は約3500件と、堅調に推移しており、さらなる再エネ電源の確保が課題となっている。その一環で展開するサービスの一つが「0円ソーラー」だ。一般家庭に設置費無料でパネルを設置し、10年後には設備を無償譲渡する。その間、利用者は湘南電力から、切り替え前より安い価格で供給を受け、余剰分は湘南電力の電源として活用する。もちろん、非常時には自家消費することも可能だ。

県の補助金を活用し、1kW当たり4万円が助成される。設置費用の2割が補助金、残りを湘南電力が負担し、10年間で回収するモデルだ。同サービスの利用者は県内で約100件に上る。湘南電力社長も務める原氏は「FIT切れ電気を買い取っても顧客は大したメリットを感じません。自家消費型に移っていただき、余剰電力は地域内で回す。その中で湘南電力も利益を上げるという仕組みです」と、事業の狙いを説明する。

EVシェアリングなど新たなビジネスに積極的に挑戦

さらに、将来を見据えたビジネスモデルの模索にも積極姿勢を見せる。変動性再エネの導入が加速する中、需要側での調整力にEVを活用する取り組みが脚光を浴びている。湘南電力もEVの利活用に注目。スタートアップ企業のREXEV、小田原市と連携し、再エネを充電したEVのカーシェアリング事業を実施している。地域の温暖化対策や人口減少といった課題解決につなげるべく、脱炭素型の地域交通モデル構築を目指す。具体的には、①地域交通の脱炭素化、②地域資源の有効活用、③災害に強いまちづくり、④住民サービスの向上―を狙う。同事業は環境省の地域循環共生圏構築のモデル事業に採択された。

バスやタクシー、地域住民が利用するカーシェアリングにEVを導入し、地域の再エネ電気を充電。問題なく移動できるよう、充電残量を管理する。現在、市内に34台のEVを設置。ある程度のボリュームを確保しており、そのバッテリーは、平時は系統の負荷軽減に、また非常時は電力供給の継続につなげる構想だ。サービスの利用者は500人余りに上る。

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