「2脚1/2面包み込み工法」を初採用 制約の多い土地での工事が可能に

2020年11月9日

【中国電力ネットワーク】

中国電力ネットワークは送電鉄塔の建て替え工事で「2脚1/2面包み込み工法」を初採用した。建設時とは異なる条件下にある経年インフラを、本工法を活用して更新する。

全国各地の送電鉄塔の大半は高度経済成長期に建設されたもので、それらは、ここ数年で築60年を迎えようとしている。

中国電力ネットワークは、中国地域の約2万1000基もの送電鉄塔を管理しており、2030年代までに約4200基の経年鉄塔を計画的に更新するよう、取り組んでいる。同社送電工事グループは、広島市と松江市をつなぐ山陰幹線(電圧220kV)で、広島県側の鉄塔建替工事を進めている。その中で同社は、既設の鉄塔の外側に新設鉄塔を組み立てていく「包み込み工法」を採用した。

作業工程の概要。2ラインのうち、1ラインは常に送電しながら工事を進めた

一般的な鉄塔建替工事では、まず既設鉄塔付近に新しい鉄塔を建設し、その後、既設鉄塔を解体する。しかし、用地の関係で新しい鉄塔を建てる土地がない現場も多い。また既存鉄塔の周辺に土地があったとしても、周辺住民の反対や、住宅などの建造物の上に電圧170kV以上の架空線を敷設することが法律で禁止されていることなどから、建設できない場所も多いという。

こうした事例に対応できるのが、「包み込み工法」。既設鉄塔の外側に新たな鉄塔を建設するため、前述の課題がクリアできる。

さらに今回の工事では、同じ場所に既設鉄塔より高い鉄塔を建てることで、接近樹木の伐採頻度を減らすというもう一つの目的も達成することができた。実際に今回の建て替えでは、鉄塔の高さが29mから63mへと倍以上高くなった。

初採用工法で試行錯誤 既設鉄塔も有効利用

この工法が採用されたのは、送電鉄塔建設後にベッドタウンとして開発が進んだ広島市安佐北区の現場。送電網は従来、市街地から離れた山林や農作地などの郊外に設けられていることが多いが、鉄塔建設後に宅地造成が進んだ地域では、代替ルートを設けるケースや、新たに鉄塔を建てる場所のないケースもあり、この現場もまさにそういう場所だった。

さらに今回は、電力供給上、送電線路を2回線同時に停電できないという制約があったため、既設鉄塔で送電を続けながら新しい鉄塔の工事を行う「2脚1/2面包み込み工法」を初めて採用した。

本工法の最大の特徴は、既存鉄塔の構造を利用しながら、新しい鉄塔を片側ずつ建設する点だ。これにより、2回線のうち1回線は、建設作業中も送電を続けられる。

新設鉄塔の中に包まれた既存鉄塔は工事後、撤去している

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